院長ブログ

健康診断で異常が発見された一例その1(猫ちゃんの膀胱結石)


今年も多くの方に秋の健診キャンペーンをご利用いただき、誠にありがとうございました。

今回は今年の健診において新たに認められた疾患で、外科的介入の実施に至ったケースをご紹介させて頂きます。

ケースリポート①は、猫ちゃんの膀胱結石です。

元々、この子は心臓に軽度のトラブルが以前に認められており継続的な治療を行っていました。

年齢もシニア世代になってきたから心臓とあわせての、初めての全身的な健診となりました。

健診の検査の中で認められたのが、膀胱結石でした。

特に今までは膀胱結石や、膀胱炎などの尿路系トラブルが認められたことは特にありませんでしたし、飼い主様にお伺いしても当院で継続的に受診して頂く以前にも同様の問題は見られていなかったようです。

尿検査では、その時はストルバイト結晶という尿石の種類が検出されました。この種類の尿石は内科治療により時間は要しますが少しずつ石が溶解してくれる可能性があります。既に膀胱内に幾つかの結石が形成されていましたが、血尿頻尿などの膀胱炎症状は見られていなかった為、この内科治療を長期的に実施して経過を見ていきましょうという事になりました。

気がかりだったのは、レントゲンに写っている膀胱内の結石の形が、尿検査で出てきた結晶の種類と違う気がするのだが...という事でした。

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健診結果を受けて治療方針を定めてから約2週間後...血尿頻尿の症状が出現してしまいました。

原因は明らかに膀胱結石に因ることは明白でしたので、溶解を目指す治療は既に実施済みでしたから二次的に生じた膀胱炎を対症的に治療していくことになりました。

しかし、その後も改善~再発を繰り返すことになり、猫ちゃんもトイレとお友達になってしまう時間が長くなってきて、それに伴う疲れも見られるようなことが増えてきてしまいました。

画像検査上の違和感もずっとあったことから、尿検査で検出されていた石の種類と膀胱内のそれは異なるであろうという判断のもと、膀胱内のそれは溶解しないタイプであると考えられるので経過を見ないで摘出手術をした方が状況改善には良いと判断し、膀胱結石摘出の為の手術を行う事になりました。

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手術にて摘出された結石が上の写真になります。綺麗な花の形のように見えますが、この花びら部分の膀胱粘膜に突き刺さるように存在していたと考えられ、持続的な不快感や炎症を引き起こしていたものと考えます。

摘出した石の種類はやはり溶解しないタイプの、シュウ酸カルシウム結石でした。

尿検査で検出されたものと異なるのは、もしかすると大元のシュウ酸カルシウム結石が存在することにより引き起こされた初期の膀胱炎症状の過程でストルバイト結晶が形成され、それが健診時の尿検査で見つかった・・・のかもしれないという推測です。

残念ながら腎臓内にも小さな結石が存在しており、こちらも恐らくは溶けない石と考えられます。今後も引き続き石の形成予防と、溶解の可能性が少しでもある方策でもって継続的に治療を行っていくことになりました。

手術の退院後以降、トイレとお友達としての距離感は適切にお付き合いできているようです。良かった!



猫ちゃんの消化器閉塞2ケースのリポート


先月に引き続きケースリポートは、猫ちゃんの閉塞による事案です😿

ケース①の猫ちゃんでは、この子は「運が悪かった」という言葉が当てはまってしまうという印象でした。

何故ならば、何か明らかな異物を誤食したわけではなく、原因が「毛玉」だったからです。

5月以降はワンニャン'sは抜け毛が多くあるかと思います。気づけば毛玉ポワポワになっていたり、家の床をころこり転がって行ったりと...我が家もそうですが💦猫ちゃんについては自分で毛づくろいをしますので、飲み込んだ毛を時々吐き戻したり、ウンチの中に毛が混じっていたりすることも多くみかけると思います。

大半のケースでは毛繕いなどで飲み込んでしまった毛は毛玉となって何れかのルートで体外に排泄されます。

しかし、今回の猫ちゃんはその毛が排泄されず、また飲み込んだ毛が胃壁にべったり張り付くような感じとなってしまい、結果的に閉塞と同様の症状を呈してしまいました。画像検査では胃内の様子がなんだかおかしい...何かありそうだが...という程度の印象でしかなかったのですが、開腹手術をして胃内を見てみると先程の記載のようになっていました。

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実際に回収した毛ですが、正直なところでいうと量はそれほど大量というものではありませんでした。何故このぐらいの量の毛にもかかわるべったりと張り付いて悪さをしたのか......ですので、「運が悪かった」という言葉が浮かんでしまったケースでした。

続くケース②の猫ちゃんは、こちらは明らかに異物を「やってしまった😿」というパターンです。

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稟告を飼い主様から頂いた時点で異物を疑い、そしてレントゲン検査...いますね、確実に💦

という事でこの子も開腹手術に😿

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こちらも稟告から閉塞しているものは予想がついていましたが、何を飲み込んでしまったかというとステンレスタワシです。

元々の癖で金属系のものを噛んだりして遊ぶ傾向があったようで、来院前にこのタワシの一部を吐いたことにより、受診されたという経緯でした。

ご覧の通りのとげとげなので、腸壁を大分傷つけているだろうなと思いました。摘出の際にも腸粘膜に食い込むようなところもあったので術後の経過が心配でしたが、続発するトラブルは幸いにして発生せず、食欲旺盛になって退院してくれました。

何故だか今年は猫ちゃんの胃腸器閉塞が続いています。こういった症状以外の手術もありますが、今月は続いていたのでケースリポートに。

異物に対しては基本的な注意は必要ですが、今回の2ケースにつきましてはなかなか防ぎきるのも難しいかなとも感じました😿



便秘傾向と食後まもなくの嘔吐を主訴とする猫ちゃんの症例 2023/06


以前にも別の疾患の際にお話ししたことがあると思いますが、普段は遭遇頻度が高くない疾患が何故か続いて診る事がある、という動物病院あるあるな話です。

今回に続いていたのは、前回にケースブログで記載したのと同じような猫ちゃんで食後すぐに吐いてしまうという症状です。

以前からやや便通がスムーズではないという子でしたが、数日前からの食欲不振と活動性低下を主訴に来院されました。

嘔吐も見られていましたが、排便時の前後に見られるような印象でしたので便秘~それ未満による胃腸の通過障害をまずは疑いました。

しかし翌日には排便前後ではなく、食後すぐに嘔吐してしまうという稟告に変わった為、胃腸器での通過障害(閉塞)を疑って検査を実施しました。超音波検査を実施すると、腸の一部分のみ明らかに太く変化しており、その内容も形が不整であったことから何らかの腸管腫瘍による閉塞と判断し、入院下で状態の安定化を図った後に手術を実施しました。

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思った通りに、腸の一部が腫瘍と思われる病変に変化しており、またその一部は潰瘍化していました。

お腹の中の炎症はまだひどくない状況だったので、その点は幸いでした。腫瘤は小腸にあったのですが、盲腸のすぐ近く、つまりは大腸に隣接するような位置に発生していたために便が出にくいという状況を引き起こしていたものと考えられます。

病気の状況としては2月のケースブログの猫ちゃんと似ているものでした。

腫瘍を切除し、腸同士をつなぎ合わせて、お腹の中をきれいに洗ってから閉腹して手術は無事に終了しました。

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切除した腫瘤は長さにしてみると3cm程でしたが、この大きさのものでも症状としては深刻な状況を引き起こしてしまいます。(※膿盆の柄は気にしないでください。ふざけているわけではなく、当院で日常的に使っているものです...かわいいですよね🐱)

切除した腫瘤は病理検査に出したところ、前回の子とは違う腫瘍でリンパ腫という検査結果でした。

リンパ腫は抗がん剤が効きやすい腫瘍に分類されることから、今後は抗がん剤による治療アプローチを行っていく予定です。

手術後は、食欲も回復して便通もスムーズになって日常を過ごしてくれています。



慢性嘔吐と緩徐な体重減少が見られた猫ちゃんの症例 2023/02


『複数回の激しい嘔吐が続いている』

こういった症状の場合にまず最初に頭に浮かぶのは、異物誤飲誤食による胃腸の閉塞です。

特に若いワンちゃんだったり、ビニールやティッシュをかじるネコちゃんだったり、紐が好きだったり、明らかに何かを破壊してパーツが無くなっていたりする背景があれば尚更その疑いが高まります。

そういったケースでない場合に、次に疑うのは何かしらの中毒物質の摂取です。突発的(数時間以内に突然激しく複数回みられる)な嘔吐であれば、身の回りに何か中毒を疑うようなものがないかどうかの問診を細かに行います。食品、薬品、観葉植物、DIY系道具類などなど。

これらも該当しなさそうなケースでは、感染性などの胃腸炎或いはその他原因による急性胃腸器障害を疑っていきます。

今回のケースの子は、激しい嘔吐...とまではいかないものの、慢性的な経過で、「吐く時は何回か吐く。そうでない、全く吐かない時もある」というように症状自体が流動的な子でした。

2か月ほど前より上記のような症状が度々見られるようになってきたとの事です。本人の様子としては元気があって、食欲も安定していてご飯もしっかりと食べます。便通も平均して毎日はあったようです。

この稟告を聞いた時点では、異物閉塞や中毒物摂取の可能性は低めで、胃腸機能の運動機能に問題があるのではという事でそちらの治療を行いました。投薬によるアプローチで多少の改善は見られたものの、やはり最初の症状は無くなることはありませんでした。

慢性経過のうちに、食欲はあるものの体重が徐々に減少傾向にあった為に幾つかの積極的検査を実施する事となりました。

血液検査ではほとんど異常が見られませんでした。画像検査では、超音波検査で腸に怪しいところが...

腸に何かありそうという点と、今までの症状から疑うところは腸に何か良く無いもの、つまりは悪性腫瘍があるのではないかと疑うものでした。腸に腫瘍があった場合、その腫瘍が腸を物理的に閉塞させてしまうことで通過障害が生じて嘔吐が度々見られることは納得のいくところです。しかし、イマイチ嘔吐の回数などの様子や、本人の食欲の点から腑に落ちない点もあり...。そして画像所見でも怪しいはわかるのですが、「異物なのか、腫瘍なのか」が判別に迷うところでした。

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そこで、飼い主様とご相談させて頂き、「試験的開腹」という名目で手術を実施することに同意を頂きました。

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超音波画像でみた部分は、実際にはこのようになっていました。異物によるものではなく、何らかの腫瘍性病変によるものでした。腫瘍によって腸管の内腔が狭窄してしまったことにより、食べ物などが通過できずに嘔吐してしまっていたという事です。

この後、腫瘍の見られる腸管部分は切除摘出し、腸管を繋ぎ合わせて手術は終了しました。

病理検査の結果では、残念ながら悪性の腫瘍という結果でした。腸管そのものは大丈夫でしたが周囲組織にがん細胞が転移している可能性が高い結果でしたので、今後は抗がん剤を用いての治療アプローチを実施していくこととなります。

今回のケースの子では、正直なところ最終的に開腹手術を実施するまでは病態の原因がはっきりと判断できませんでした。何かしらの原因で胃腸の通過障害が起きている事はわかっていましたが、異物なのか、腫瘍なのか、炎症なのか等々、メスを入れるまでに断定できない状態で手術を行わざるを得なかったのは良い事ではありません。しかし個人的な経験上、試験開腹という方法に踏み切らざるを得ずに実施した場合には、100%で何かしらの問題点が見つかってしまっています。

今回のケースで悩んでいたのは、食欲及び食事量に対して嘔吐をする様子に流動性が見られたというところでした。不完全閉塞という結果でしたので腸管に通過できるスペースがあったのは確かなのですが、そのスペースは鉛筆以下の太さがやっとこさ通る程度......よくこの径で物が通過できていたなと驚くものでした。

なるべく試験開腹という手段はとらないに越したことはありませんが、苦虫を嚙みつぶしたような顔つきで私がその方針を提案せざる得なかった場合には...お察しください...😿



🐯→🐰2022年、一年間大変お世話になりました🐅→🐇


本日にて、当院の年内の診察は最終日となります。

12月31日(土)~1月3日(火)までは、休診とさせて頂きます。

年明けの診療は 1月4日 水曜日からとなります。

今年も一年間、皆様には大変お世話になりました事、厚く御礼申し上げます。🙇

2023年も、うぇる動物病院をどうぞ宜しくお願い致します。🐰

皆様、良いお年をお迎えくださいますようお祈り申し上げます🎍

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