院長ブログ

便秘傾向と食後まもなくの嘔吐を主訴とする猫ちゃんの症例 2023/06


以前にも別の疾患の際にお話ししたことがあると思いますが、普段は遭遇頻度が高くない疾患が何故か続いて診る事がある、という動物病院あるあるな話です。

今回に続いていたのは、前回にケースブログで記載したのと同じような猫ちゃんで食後すぐに吐いてしまうという症状です。

以前からやや便通がスムーズではないという子でしたが、数日前からの食欲不振と活動性低下を主訴に来院されました。

嘔吐も見られていましたが、排便時の前後に見られるような印象でしたので便秘~それ未満による胃腸の通過障害をまずは疑いました。

しかし翌日には排便前後ではなく、食後すぐに嘔吐してしまうという稟告に変わった為、胃腸器での通過障害(閉塞)を疑って検査を実施しました。超音波検査を実施すると、腸の一部分のみ明らかに太く変化しており、その内容も形が不整であったことから何らかの腸管腫瘍による閉塞と判断し、入院下で状態の安定化を図った後に手術を実施しました。

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思った通りに、腸の一部が腫瘍と思われる病変に変化しており、またその一部は潰瘍化していました。

お腹の中の炎症はまだひどくない状況だったので、その点は幸いでした。腫瘤は小腸にあったのですが、盲腸のすぐ近く、つまりは大腸に隣接するような位置に発生していたために便が出にくいという状況を引き起こしていたものと考えられます。

病気の状況としては2月のケースブログの猫ちゃんと似ているものでした。

腫瘍を切除し、腸同士をつなぎ合わせて、お腹の中をきれいに洗ってから閉腹して手術は無事に終了しました。

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切除した腫瘤は長さにしてみると3cm程でしたが、この大きさのものでも症状としては深刻な状況を引き起こしてしまいます。(※膿盆の柄は気にしないでください。ふざけているわけではなく、当院で日常的に使っているものです...かわいいですよね🐱)

切除した腫瘤は病理検査に出したところ、前回の子とは違う腫瘍でリンパ腫という検査結果でした。

リンパ腫は抗がん剤が効きやすい腫瘍に分類されることから、今後は抗がん剤による治療アプローチを行っていく予定です。

手術後は、食欲も回復して便通もスムーズになって日常を過ごしてくれています。



慢性嘔吐と緩徐な体重減少が見られた猫ちゃんの症例 2023/02


『複数回の激しい嘔吐が続いている』

こういった症状の場合にまず最初に頭に浮かぶのは、異物誤飲誤食による胃腸の閉塞です。

特に若いワンちゃんだったり、ビニールやティッシュをかじるネコちゃんだったり、紐が好きだったり、明らかに何かを破壊してパーツが無くなっていたりする背景があれば尚更その疑いが高まります。

そういったケースでない場合に、次に疑うのは何かしらの中毒物質の摂取です。突発的(数時間以内に突然激しく複数回みられる)な嘔吐であれば、身の回りに何か中毒を疑うようなものがないかどうかの問診を細かに行います。食品、薬品、観葉植物、DIY系道具類などなど。

これらも該当しなさそうなケースでは、感染性などの胃腸炎或いはその他原因による急性胃腸器障害を疑っていきます。

今回のケースの子は、激しい嘔吐...とまではいかないものの、慢性的な経過で、「吐く時は何回か吐く。そうでない、全く吐かない時もある」というように症状自体が流動的な子でした。

2か月ほど前より上記のような症状が度々見られるようになってきたとの事です。本人の様子としては元気があって、食欲も安定していてご飯もしっかりと食べます。便通も平均して毎日はあったようです。

この稟告を聞いた時点では、異物閉塞や中毒物摂取の可能性は低めで、胃腸機能の運動機能に問題があるのではという事でそちらの治療を行いました。投薬によるアプローチで多少の改善は見られたものの、やはり最初の症状は無くなることはありませんでした。

慢性経過のうちに、食欲はあるものの体重が徐々に減少傾向にあった為に幾つかの積極的検査を実施する事となりました。

血液検査ではほとんど異常が見られませんでした。画像検査では、超音波検査で腸に怪しいところが...

腸に何かありそうという点と、今までの症状から疑うところは腸に何か良く無いもの、つまりは悪性腫瘍があるのではないかと疑うものでした。腸に腫瘍があった場合、その腫瘍が腸を物理的に閉塞させてしまうことで通過障害が生じて嘔吐が度々見られることは納得のいくところです。しかし、イマイチ嘔吐の回数などの様子や、本人の食欲の点から腑に落ちない点もあり...。そして画像所見でも怪しいはわかるのですが、「異物なのか、腫瘍なのか」が判別に迷うところでした。

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そこで、飼い主様とご相談させて頂き、「試験的開腹」という名目で手術を実施することに同意を頂きました。

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超音波画像でみた部分は、実際にはこのようになっていました。異物によるものではなく、何らかの腫瘍性病変によるものでした。腫瘍によって腸管の内腔が狭窄してしまったことにより、食べ物などが通過できずに嘔吐してしまっていたという事です。

この後、腫瘍の見られる腸管部分は切除摘出し、腸管を繋ぎ合わせて手術は終了しました。

病理検査の結果では、残念ながら悪性の腫瘍という結果でした。腸管そのものは大丈夫でしたが周囲組織にがん細胞が転移している可能性が高い結果でしたので、今後は抗がん剤を用いての治療アプローチを実施していくこととなります。

今回のケースの子では、正直なところ最終的に開腹手術を実施するまでは病態の原因がはっきりと判断できませんでした。何かしらの原因で胃腸の通過障害が起きている事はわかっていましたが、異物なのか、腫瘍なのか、炎症なのか等々、メスを入れるまでに断定できない状態で手術を行わざるを得なかったのは良い事ではありません。しかし個人的な経験上、試験開腹という方法に踏み切らざるを得ずに実施した場合には、100%で何かしらの問題点が見つかってしまっています。

今回のケースで悩んでいたのは、食欲及び食事量に対して嘔吐をする様子に流動性が見られたというところでした。不完全閉塞という結果でしたので腸管に通過できるスペースがあったのは確かなのですが、そのスペースは鉛筆以下の太さがやっとこさ通る程度......よくこの径で物が通過できていたなと驚くものでした。

なるべく試験開腹という手段はとらないに越したことはありませんが、苦虫を嚙みつぶしたような顔つきで私がその方針を提案せざる得なかった場合には...お察しください...😿



🐯→🐰2022年、一年間大変お世話になりました🐅→🐇


本日にて、当院の年内の診察は最終日となります。

12月31日(土)~1月3日(火)までは、休診とさせて頂きます。

年明けの診療は 1月4日 水曜日からとなります。

今年も一年間、皆様には大変お世話になりました事、厚く御礼申し上げます。🙇

2023年も、うぇる動物病院をどうぞ宜しくお願い致します。🐰

皆様、良いお年をお迎えくださいますようお祈り申し上げます🎍

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✄自宅での毛刈りの際はご注意を✄


わんちゃんねこちゃんともに、長毛の子は定期的なブラッシングやカット・トリミングを行わないと、その毛並みが乱れてしまったり、そのままにしておくと毛玉に...もっとそれが進むと、フェルトの板状の毛玉になってしまったりしてしまいます💦

定期的なブラッシングはコミュニケーションツールとしても、日々の健康チェックとしても非常によい習慣です。

しかし!上手にさせてくれる子もいれば、なかなか受け入れてくれない子も当然ながらいます(うちの猫もそのタイプ...)。

嫌がる子を抑えつけてまでブラッシングをしてくださいとは勿論言いませんし、むしろそれはやらないで下さいね。

ある程度長めの時間させてくれるならばそれに越したことはないですが、苦手な子も10秒程度、オヤツなどのツールを使いながらなだめつつ&誤魔化しつつでも、定期的なブラッシングを少しずつでもエリアを分けて行ってみて頂きたいと思います。

さて、今回の事例はまさにそんな、なかなかブラッシングをさせてくれなかった猫ちゃんの一例です。

長毛種の猫ちゃんですが、ブラッシングをしようとすると逃げてしまうとの事でなかなかさせてくれないという子のようでした。

ある日、飼い主さんが撫でていると毛玉が出来ていることに気づかれて、非常に硬い毛玉だった為に解す事ができず、ハサミを使って毛玉を切られたそうです。

それから2日後...飼い主様から、脇の下にまだ毛玉が残ってるから切って欲しいという事で来院されました。

はてさてどんな毛玉かしらと確認すると...(ちょっと写真は加工しています)

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(写真は処置時の様子なので、毛刈りをした後の写真となりますが)毛玉ではなく、実は先日のカット時に誤って皮膚ごと切ってしまっており、その皮膚の一部を毛玉と間違われてしまっていたのです。周囲の毛を刈ると、結構広範囲に切ってしまっていたことがわかります。

この子は我慢強かったのか、その時は特にギャッという事もなかったようで、飼い主さんもまさか切っていたとは思わなかったようです。

...実は、反対側も同様だったのです😿

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幸いにして、化膿はしておらず、傷口の処置後は縫合を行い、10日後には抜糸を行って治癒しました。

毛玉をハサミで切ろうとして皮膚まで切ってしまうという事故は、この子だけでなく今年は数件見られています。耳、肉球、お腹や背中の皮膚...。何れの場合も、"ハサミだけで、毛玉をつまみ上げて切る"という場合に生じています。

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(図に関するツッコミは一切受け付けません😢60秒で仕上げたものなので、縮尺とか適当なので💦)

注意しなければならない点は、毛玉を引っ張り上げると、根本の皮膚も同じように引っ張り上げられるということです。

そしてそのままハサミを入れて切ってしまうと皮膚も一緒に切ってしまうという事になります。

これを防ぐためには、≪必ず『くし』『コーム』を毛玉の下に入れてから、くしの"上"を切ること≫、です。

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こうする事で、誤って皮膚を切ってしまうことは避けられます。

毛玉を根元からしっかりと切ることはなかなか難しく、あまりに頑固なものはバリカンを用いて根こそぎ刈らないといけません。

そういった事態にならないために、少しずつでも普段からのブラッシングをお願い致します。



猫ちゃんの異物に因る腸閉塞の一例 2022/03


ケースブログとしては、猫ちゃんの異物による腸閉塞が続きますね💦

猫の場合は紐やオモチャのパーツなどが上位となります。

今回の子は、3日ほど前にお家で飼い主さんとオモチャで遊んでいた際にオモチャの先端部分を壊してくわえてしまった所を回収しようとしましたが。そのままモゴモゴと飲み込んでしまったとの事。

来院前日の夕飯時より、食後すぐにまとまった量の嘔吐が見られ、同症状が翌朝(診察当日)にも見られたとの事で受診されました。

猫ちゃん自身は、食べたい気持ちは強く、そして活動性も普通な様子。吐いてしまう以外の症状は一切なし。

問診の時点で、異物による閉塞が濃厚でしたのですぐに確認の検査を行いました。

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X線でお腹を撮影して、気がかりになった点はこの2か所。不自然な空気の溜まり方と、その近くに何やら影らしきもの...?

続いての超音波検査では以下の画像が見られました。

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青い線が腸のアウトラインになります。オレンジ色の部分が怪しい影の部分。黄色は、この怪しい影の手前に停滞している腸の水分等です。

画像検査より、典型的な異物の閉塞が確認されましたので、この後に麻酔前の検査を実施して問題が見られませんでしたので、大きな体調の悪化が見られていない現状ですぐに手術に進むことになりました。

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こちらは閉塞している部分になります。腸の中にみっちりと閉塞してしまっており、本来であればぐにゃぐにゃの腸が「ぼわっ」としていて固そうな様子が見られます。

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これが閉塞していた異物です。問診でうかがっていた、オモチャ(猫じゃらし)の先端部分でした。

今回のケースでは、経緯が明瞭だった事、症状の出現からすぐの来院だった事、診断→手術までの時間がすぐだった事などの複数の好条件が重なり、腸管へのダメージがほとんどなかった事が幸いでした。

惜しむべき点は異物を飲み込んでしまったその日に受診ができていればというところですが、しかしそれ以外の飼い主様の対応は迅速でしたので、術後の猫ちゃんの回復は非常に早く、入院中でも猫舎内を悠々自適に過ごしておりました(外来時間外のみですが)。

閉塞の原因となったオモチャのパーツですが、今回の猫ちゃんの場合は遊ぶ際の力が強かった為に壊れてしまったという事が不運な点となります。オモチャの出しっ放しなどはお止め頂きたいですが、それとは違うケースなので予測は不可能です。

退院時に飼い主様にお話を聞いたところ、オモチャはホームセンターのペットコーナーにあるものを買ってきたものでした。偶々、そのお店に直前に別件の買い物で立ち寄っており該当するオモチャコーナーを覗いてきたばかりでした。

正直なところで申し上げますと、陳列されているオモチャ類の半分以上は「この形は危険だな」と思うものでした。

どんなオモチャならば絶対に大丈夫なのかという事を申し上げるのも難しいですが(レーザーポインター系は飲み込むという危険は皆無ですね)、こと異物閉塞を危惧するのであれば、紐の先端に小さなぬいぐるみが装着されているものや、ぬいぐるみ以外でも鈴やビーズのような装飾品が付いているものなどは遊んでいる最中に取れてしまい飲み込む可能性がある為にオススメできません。

よくある形のオモチャなのですが、そういった形のものであれば、紐はしっかりとしており(裂けて細くなるような材質の紐は避けましょう)、先端のパーツとしっかり固定されて、且つ先端パーツは細かい装飾パーツのついていないようなものを選んで頂きたいなと思います。......オモチャとしての可愛げは大分なくなってしまいますが...💦



アクセス

鶴川街道、「市立博物館入口」信号近く

うぇる動物病院

Pあり

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駐車場内でのトラブルは責任を負いかねますのでご了承の上ご利用ください。

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