固すぎるオモチャ・オヤツにご用心!!歯の破折
以前(2020年1月)のケースリポートと類似事例となります。
今回も類似事例を取り上げさせて頂いた理由としましては、当院からの注意喚起の意味合いを強く意図しています。
今回のケースリポートの子は、若い年齢のワンちゃんです。
固いものを噛んで遊ぶことが好きで、色々な物を噛んでいたそうです。
その中で、オモチャとして与えていたのが『蹄』。
そうです、私が"個人的"に敵視しているオモチャの一つです。その理由は至って簡単です、歯にとって良い点が全く無いからです。
さて、そのカジガジして遊ぶのが好きなワンちゃんがどうなったかというと、言葉の表現は良くは無いかもしれませんが、予想通りという言葉で表されるように、案の定、歯が欠けて折れました。
飼い主さんとしてみたら、お店で販売しているものが悪影響を及ぼすものとは思わないでしょうし、なかなか直接的にそういった情報に接する機会も無いor少ないかもしれません。
受診の経緯としましては、蹄を噛んで遊んでいて後に欠けた歯が落ちていた事、それ以降そちらの歯みがきをするのを非常に嫌がるようになったとの事で来院されました。
このようなケースで一番折れやすい歯は、上顎第4前臼歯という部分です。
(画像は https://petokoto.com/articles/2513 様のものをご使用させて頂いております)
非常に力が加わりやすく、噛み応えがよい部分なのでしょう、ワンちゃんは前の歯ではなく後ろ側の歯でものを噛む事が多いです。
件のワンちゃんの歯の様子です(診察時ではなく、処置時の写真となります)。青矢印部分の上顎第4前臼歯の一部が欠けており、歯の神経や血管がそのまま見えてしまっている露髄という状況になっています。当然、神経が直に触れるような状態ですから、知覚過敏的な痛みがあると思われます。
こうなってしまった場合の治療方針は二つとなります。
一つは歯を温存する形で、歯冠修復を行って治療する方法です。こちらは露髄した神経・血管を薬剤を注入することで機能を消失させ、その後に空隙となった空間に充填剤を入れて固めて隙間を無くして細菌などの侵入を防ぎ、折れた歯の部分にはレジンなどの素材を使いいわゆる"かぶせもの"をして固定化する手術方法です。
二つめは単純明瞭、該当歯の抜歯です。
歯冠修復術のメリットは、歯の温存が可能であり機能維持・外観形状が今までと同じであることです。デメリットは、上記処置には一般的な歯科処置プラスαの器材・技術が必要であり、引き続き強くものを噛む子では修復した歯冠が脱落してしまう(かぶせものが外れる)場合があるという事です。残念ながら、当院では歯冠修復術は実施することはできません。
抜歯対応のメリットは、当院対応可能、という点は置いておいて。抜いてしまえば基本的にはそれで終了、かぶせものなどもありませんので基本的には施術部位が治癒した後はそのままです。デメリットは、歯を抜きますので当然ながらその部分では物は噛めませんし、外観も歯抜け状態となります。とはいえ、非常に支障をきたすようなケースは見たことは無いのですが、やはり虫歯ではない歯(※虫歯のような状況になる可能性はあります)を抜歯するという点に抵抗感を覚える方も多いのも当然です。
このワンちゃんは当院で歯の破折を確認後に上記治療法をご説明し、歯冠修復を実施可能な病院様を一度受診されました。その上で、上記等のメリット・デメリットをお考えの上、当院での抜歯処置を実施することになりました。
施術後の写真です。赤丸部分が抜歯部位になります。抜歯した後は歯が埋まっていた部分に穴が生じますので、ドリル等の道具を使い形を見ながら歯茎の粘膜を利用して縫合して覆って塞ぎます。しばらくは痛みや慣れないところもあるでしょうが、10日~14日もすれば問題なく過ごしている事でしょう。
今回あるいは前回のようなケースを防ぐ方法は簡単です。
固すぎるオモチャ・オヤツは与えない
これだけです。癖として固いもの噛む傾向が強い子は確かにいます。ストレス発散、暇つぶしとしてそういったアイテムを与える事もあるかもしれませんが、固すぎるものは避けるべきでしょう。
蹄、骨(例えば牛骨など)、非常に硬い硬質プラスチック、石(まさか与えないと思いますが...)
個人的には百害あって一利なしです(以前にも言った記憶が...?)。
お店等で売っているもの全てが、その子にとって良いものというわけではありません。大変かもしれませんが、飼い主様自身での情報収集も多少は必要になってしまっているのかも...。
余談:今回はワンちゃんのオモチャですが、猫ちゃんのオモチャでは棒&紐&先っぽに小さなぬいぐるみ・オモチャのようなものは、遊ぶのは結構ですが管理は厳密に、置きっぱなし出しっ放しは絶対ダメです🙅