院長ブログ

厄介なお腹の寄生虫、猫トリコモナス 


今回は、時折繰り返す軟便&少量の血液付着便がある猫ちゃんのお話です。

元気一杯食欲盛沢山の子猫ちゃんですが、ご自宅に来て以来ずっと上記のような症状が続いております。ひどい下痢になってしまう事は少なく、何となく軟らかい、というものです。

便検査を実施すると、出てきたものがおりました。(動画になります)

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画質が見辛くて申し訳ないですが、画面の中央付近に楕円形の動く何かがいますね。

これはトリコモナスという寄生虫です。

「トリコモナス 猫」の画像検索結果(染色されたトリコモナス)

トリコモナスは原虫という寄生虫の種類です。これと症状がよく似て、形も類似点があるものにジアルジアというものがいます。

関連画像(染色されたジアルジア)

原虫という寄生虫の種類自体をあまり聞きなれないかもしれません。

多くの方の寄生虫のイメージは「サナダムシ」「回虫」「ぎょう虫」「白くてうにょうにょ長いもの」というものではないかと思われます。実際にそういった寄生虫を見かける事も多く、それらが動物に居た場合には飼い主様もご自身の目で見つけられる事もあります。

しかし原虫は顕微鏡でしか見られない為、そして形も長細いうにょうにょしたものとは異なる為に寄生虫として理解するのに戸惑ってしまう事があるでしょう。

問題なのは、トリコモナスもジアルジアも糞便検査での検出率が高くないという事があります。下痢の症状で来院された際に持参して頂いた便では、検査をしてもこれらの寄生虫が見つからない事が多く、環境中に排便されてから時間が経てば検出はほぼ不可能になります。直接お尻から便を採取するか、それこそ病院の目の前でした便..."採れたてホヤホヤ"でないと顕微鏡では難しいでしょう。ネコちゃんから見つかった今回のトリコモナスも、お尻から直接採取したもので見つかっています。

しかし採れたて便でも見つからない事も度々あります。一般的に直接採取した便での検出率は10~20%程度とも言われています。そういった場合、これらの寄生虫感染が疑わしい場合には遺伝子検査というものを行います。遺伝子検査を行う事で、病気の原因となり得る細菌・ウイルス・寄生虫が便の中(腸内)に含まれているかを調べ出す検査です。非常に有用ですが、こちらも検出率は80~90%で100%ではない事と、検査費用の点で何より難しく、一般的に行う検査というよりかは診断に苦慮する際に用いることが当院は多いです。

さて、このトリコモナスという寄生虫。検査で見つけづらい=診断がしづらいという事も厄介ですが、それ以外にもいろいろと厄介な事があります。

2つ目の厄介な点は、非常にしぶといということです。

トリコモナスに対して使われる駆虫薬にはメトロニダゾール、チニダゾール、ロニダゾールがあります。メトロニダゾールという薬が一般的で、第一選択として使われる機会が多いでしょう。

これらの薬のどれが最も優れているという事は一概には言えず、そのケースに使用してみての結果論として効果の高い低いが判断されることになります。しかしこれらの薬を用いても、完全に駆虫できるとは限らず、症状が出ないまでに改善しても腸内には残存しているという事もあります。

残存してしまうとその子のした便の中に寄生虫が含まれることになります。自然に排泄されて時間が経った便の中で生存し続ける事は困難ですが、排便直後の便そのものやお尻周囲に付着した便には感染力を持ったトリコモナスがいますので、触れたり舐めたりするとそこで感染サイクルが続いてしまう為に、同居猫さんがいるお家やブリーダー、ペットショップなどでは他の子との慢性感染が継続してしまう事で頭を抱えてしまいます。

治療を継続してもなかなか治らない、トリコモナスが居なくならないという事態も多いので、非常に厄介な寄生虫です。

3つ目の厄介な点、それは治療に用いる薬が何れも"極上級に苦い"という事です。

トリコモナスに用いられるお薬は先述のものが主となりますが、その全てがとても苦いものです。

人にも用いられるお薬ですが、この薬は有効成分を固めた錠剤の外側にコーティングがしてあります。苦味の部分が直接味覚に触れにくいようにしてあります。

しかし動物に用いる場合にはそのままの錠剤ではお薬が多すぎる為に分割したり粉にしたりする必要があります。そうすると、どうしても苦味の強い部分が表に出て来てしまうので投薬に困る事があります。

特に猫ちゃんではお薬を飲ませる際に苦味を感じるとカニのように泡をぶくぶく、ヨダレをだらだらで非常に難しくなることがあります...。

4つ目の厄介な点は感染力です。

駆虫しきれずにキャリアとなってしまう子もいますが、そういった子は明らかな血便や下痢は示すことなく時々軟便になる程度で、ほとんど無症状で過ごしている事も多いです。しかし便には寄生虫が居る為、免疫力の弱い子犬子猫や持病がある子などには感染しやすくなります。また稀に人間にも感染する事があります。

こういった事態を防ぐためにはこれらの寄生虫が検出された場合には、他の子との接触を避け、できれば感染が確認された子を隔離し、使用していたトイレや敷物などをよく洗って干して乾かすなど清潔に保つことが大切です。

回虫や条虫といった寄生虫は駆虫薬の投薬でほぼ駆除する事ができますが、ことトリコモナスに関しては投薬の手間とそのしぶとさから、病院も飼い主様も互いに頭を悩ます存在です。



右眼窩下腫脹→歯肉からの炎症にて、抜歯したワンちゃんの例


先日に歯科処置を実施したワンちゃんの例です。

処置に先立つ1週間ほど前に、右目の下が急に腫れてしまったという事で来院されました。

特に外傷などはなく、また反対側の腫れは無い為にアレルギー性の症状でもありません。

シニアな年齢のワンちゃんの為、もしかしたらかなとお口の中を観察してみると案の定、腫れてしまった右目の下近くの歯に歯石の付着と重度な歯肉炎が認められました。

歯肉炎~根尖部からの炎症による腫脹でした。先だって注射と内服で症状を緩和させた後に、麻酔下で処置を実施する事になりました。

飼い主様は以前から口臭の存在には気づかれてましたが、ワンちゃんも特に口臭以外の症状はなく食事も通常通りに食べれていたとの事でしたので様子を見られていたそうです。

今回の症状が出てきたしまった時も、食欲や食べ方はいつもと変わらなかったそうです。それはそれで凄い💦

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上下共に奥歯に歯石が多く付着している様子がお分かりいただけるかと思います。基本的には前歯よりも奥歯の方がその配置及び機能的な面で歯石が付着しやすくなってしまいます。

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幾つかの歯は歯茎のダメージの為に退縮し、写真の様に歯の下に隙間が生じてしまっていました。

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ダメージの大きい歯の部分は抜歯し、縫合した後に全体を磨いて終了となります。

不思議だったのは、歯の先端の多くが摩耗して少し平らになっている事でした。よく固いオモチャ(蹄や牛骨、ケージなど)を噛む子には見られる事が多いのですが、そういったものを与えた事は昔も今もなく、且つ昔にそんなに色々と噛んでいた事もなかったという飼い主様のお話でしたので、何故そうなったのか??

摩耗が深刻ですと歯の髄が露出して、その部分から感染を引き起こしてしまう事もあります。(歯が折れてしまった際にも同様の事が起こり得ます)今回のワンちゃんはその影響・可能性は低いと判断して、それらの抜歯は行いませんでした。(恐らく疑いのある歯を全部抜くと、ほぼ全てを抜くことに...💦)

何本か歯を抜きましたので、痛み止めを用いていたとしても2~3日間は食事を食べる際に影響があるかと思いましたが、後日お話を伺うと処置の翌日からは以前同様に食事を食べていたそうです。やはり、その点は凄かった💦



おかげさまで開院1周年を迎えました


2017年の3月7日に開院し、本日で開院一周年を迎える事が出来ました。

ひとえに、ご来院頂きました飼い主様と動物さん達のお陰です。

心より感謝申し上げます。

この1年の間に、今まで経験することのなかった出来事にも多く遭遇致しました。

当院がお力添えできなかった事も多々御座いました。

気持ちを新たに、今後も皆様と地域に貢献できるように精進して参ります。

引き続き、うぇる動物病院を宜しくお願い致します。

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乳腺腫瘍を摘出した2例


以前に、乳腺腫瘍を切除したももこちゃんのお話をさせて頂きました。

病理検査の結果、ももこちゃんに多数存在していた乳腺腫瘍は幸いな事に全て良性の結果でした。

今回の乳腺腫瘍の例は、残念ながら悪性という病理検査結果だったお話です。

乳腺腫瘍の悪性度の判断基準の一つに、腫瘍の大きさがあります。

1cm未満のしこり、1~3cm未満、3cm以上の3つに区分されています。

このうち3cm以上のものは悪性の疑いが高く、転移などの可能性も高いといわれます。

逆に1cm未満のものは良性の腫瘍である傾向がありますが、多発性であったり再発性であったりする場合には注意が必要です。

1~3cm未満はその間となりますので、良性の例も悪性の例もあります。

但し、大きさはあくまで基準の一つに過ぎず、大きさのみに頼って良性悪性を判断する事には危険性があります。

今回悪性という結果が出た乳腺腫瘍は、いずれも1~3cm未満の区分に入るものでした。

ちなみに以前に手術したももこちゃんの一番大きかった腫瘍は3cmありました。しかし、良性腫瘍でした。

1例目は8歳の猫ちゃんです。1歳前後で避妊手術をされている子でした。

脇の下の近くにしこりがあるとの事でご来院されました。

部分的に乳腺腫瘍が疑われた為、針吸引検査を行ったところ、悪性度のある細胞が認められていました(乳腺腫瘍かどうかの判断はつきませんでした)。

猫での乳腺腫瘍は、そのほとんどが悪性と言われています。手術前検査では転移像などは認められなかった為、外科的切除を第一に飼い主様とご相談させていただきました。

腫瘍がみつかった乳腺部分を含む片側全切除するのが治療としての理想ですが、術後管理の点と飼い主様とのご希望にて、腫瘍を含む領域乳腺切除を行う事になりました。

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一番目の乳頭の直下とその近く、丸で囲った部分にしこりがあります。

それらを含みつつ1番目の乳腺を切除する形で、黄色線のように摘出しました。

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切除した組織です。大きい方のしこりは直径で1.4cmほどでした。

病理検査では乳腺癌という結果だった為、今後は癌の再発・転移予防の為の治療と、定期検査が必要となります。

2例目は12歳のワンちゃんです。この子も避妊手術をしていましたが、手術を実施した年齢は2歳頃との事でした。

一番下の乳腺の近くにしこりがあるとの事でした。

ワンちゃんの乳腺腫瘍は、左右4~5乳腺部に発生する事が多い傾向です。

このワンちゃんも一番下の乳腺でしたので、その傾向に重なります。

大きさは1.4cmほどでした。針吸引検査では良性の乳腺腫瘍を疑う結果でしたが、悪性度の判断は針吸引検査では断定が出来ない為、腫瘍のある乳腺と繋がる一つ上の乳腺を含む領域乳腺切除を実施しました(この子はおっぱいが片側4つ)

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赤丸部分にしこりがあり、紫のラインで切除しました。

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丸部分にしこりがあります。付随するリンパ節も切除しています。

病理検査では乳腺癌で、リンパ節転移も認められました。

腫瘍細胞を叩くための抗がん剤投与や、増殖を抑制するための内服薬の投与などの治療方針をご相談させていただき実施していくことになります。こちらも転移・再発の兆候を調べるために定期的な検査が必要となります。

今回の乳腺腫瘍はどちらもあまり大きくないしこりでしたが、結果は良くないものでした。

年齢や健康状態により、必ずしも乳腺部のしこりに対して全て手術を行うのが最適ともなりませんが、小さくても悪性で短期間の内に数倍に巨大化する事もあります。

乳腺のしこりに気づいた際は様子を見ずにすぐに動物病院を受診するようにお願い致します。



急性心原性肺水腫になってしまった一例


加齢に伴って体力・筋力の低下といった日常的な衰えが見られてくるのは人も動物も同じです。

そしてまた様々な病気のリスクも上がってくるのも同様です。

ワンちゃんにおいては癌などの腫瘍性疾患や関節の疾患、そして心臓疾患が年齢と共に増加してきます。犬種によっては中年齢頃から心臓トラブルの兆候が出始める事がありますが、無症状のまま経過して、ある段階を機に症状が出現してくるという例も多く見られます。

心臓トラブルについて一番簡単な有無を調べる方法は、聴診です。

聴診によって心臓に雑音が聞こえた場合には、何らかの問題が存在している、という事になります。

但し、心臓の雑音の強弱≠症状の深刻度には必ずしもならない事があります。雑音がはっきりと聞こえても元気にしている子もいれば、雑音はさほど強くはないけども咳が出て運動を嫌がるという症状を示す子もいます。

ですので、雑音が聴取された場合は、日常の様子(症状)、レントゲン検査、心臓疾患血液マーカー、心電図、心臓エコーなどの検査を行って治療介入が必要な段階かどうかを見てから実施していく事が大切です。

心臓の治療は、悪くなってしまった心臓を治す治療ではなく、心臓の負担を緩和して長持ちさせる、という治療になります。ですので、投薬を開始してからは減薬はあっても中止という事はありません。

今回のワンちゃんは、以前より心臓の雑音の存在は確認されていた子です。ですが日常生活では心臓に関わるような明らかな症状は一切なく、元気に過ごしていました。定期検査のレントゲンにて、心臓肥大という画像上の変化が見られ始めましたので、投薬を何時から開始しようかと検討している数日間の間に、具合が一気に悪くなってしまったのです。

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上側の画像が、投薬を何時開始しようかと検討する事にした時のレントゲンです。

下側が具合が悪くなり、呼吸困難を起こして来院された時のレントゲンです。

心臓の周り(肺になります)に白いモヤがかかっています。

これは「肺水腫」といって、心臓で調節できなくなってしまった血液中の水分が肺の中に漏れ出してしまっている状態です。こうなってしまうと、お部屋の中にいながら溺れてしまっているような状態と同じになってしまいます。

心臓には4つの部屋があり、流れてくる血液を決まった一方向にのみ送り出します。しかし心臓が悪くなってくると、多くの場合、心臓の部屋を区切る逆流防止弁が問題を起こしてしまい、血液の一部が逆戻りしてしまいます。心臓は非常に頑張り屋な臓器の為、限界までは自分で何とかしようと頑張ります。しかしどこかで限界を迎えてしまうと、今回のような症状を起こしてしまいます。

このワンちゃんは今回のように悪化するまでは、一切の咳や運動を嫌がるといった症状はありませんでした。呼吸が早く荒くなったな、と飼い主様が思ってからあれよあれよと症状が進んでしまったのです。

飼い主様が早めに気づき来院して治療を実施したため、呼吸困難の症状と肺に溜まった水は数日内で改善しました。

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治療開始後1週間後のレントゲンです。肺の周囲にあったモヤが無くなっています。

今現在は心臓のお薬を服用しながら、投薬内容を調節をしているところです。

投薬以外にも運動管理や、食事の内容などもみていく必要が今後はあります。

心臓の雑音を聴診で指摘された事のある子や、中高齢で運動したり興奮したりした際に咳が出る子、動悸息切れのようなものが目につくようになった子などは、レントゲンなどの検査を行って状態を調べておくことが大切です。



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