院長ブログ

抜歯が好きです♪、という事は全くないです😓


涼しくなったと思って薄手の長袖を着た翌日にはTシャツ1枚でも汗をかく...そんな気温のアップダウンが続いていますが、ようやく秋めいた気候になる・・・ようですね、天気予報ではそう言っていました💦。

昔と異なり、現代の天気予報の精度は高いのでしょうがイレギュラー要素(ゲリラ豪雨やら、世界的な温暖化による気象変動)が強くなってきて、予報が難しくなってきてるのでしょうね。

気温変化も含めての季節の変わり目は胃腸器症状が増えることが多くなります。お腹を冷やしてしまうという点もありますが、気温変化に体がうまく馴染めずにストレスになってというケースが多いのでしょう。

さて、現在病院では秋の健診キャンペーンを実施中です。11月末までのキャンペーンとなりますので、是非ご利用ください。

健診をされた特にワンちゃんの多くには、歯周病・歯石の付着が高頻度に見られます。ここ最近の当院の歯の処置でも、歯石除去だけでは対処できずに抜歯、それも結構な本数をせざるを得ない例が何件が続いています。

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このワンちゃんは2年前に一度当院で歯の処置をしております。その時にはほぼ全ての奥歯を抜歯せざるをえない状態でした。(写真の上下の奥歯がないのがおわかりただけると思います。)

このワンちゃんはデンタルケアの有無に関わらず、口腔内の環境そのものが歯周病になり易い要因となっているようです。人で言えば「虫歯になり易い体質」というところでしょうか。シニア年齢ではありますが、お年を大分召しているという年齢ではありませんが、歯の状態はかなりダメージを負っていました。犬歯には歯石と汚れが付着しています。

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犬歯を抜歯したところです。犬歯を抜歯する際は通常は歯茎を切開して歯槽骨というものを削ってから抜歯するのですが、そういった処置をしなくても抜けてしまうほどに痛んでしまっていました。ぽっかりと穴が空いてしまっており、この穴は鼻と繋がってしまっています。また白く膿のような汚れも洗浄すると沢山排出されてきました。

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抜歯した穴は、歯茎の粘膜が欠損していた為に上唇の裏側からの粘膜を蓋代わりとして縫合しました。

また次は別のワンちゃんです。このワンちゃんはご高齢な子で、くしゃみがひどいとの主訴でご来院されました。

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このワンちゃんも奥歯、そして犬歯もかなり痛んでしまっていました。レントゲンを撮ると歯を支える骨が溶けて薄くなってきていましたので抜歯は避けられない状態でした。

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奥歯は全て、そして犬歯も両側の上は抜歯しました。やはりくしゃみの原因となっていた為に、鼻と口の部分が繋がっていました。洗浄するとびっくりするくらいの汚れが...💦長年蓄積したものが取れてスッキリしたなら何よりです。

なかなか歯磨きは難しい点もあります。歯石取りは麻酔が不可欠な為に、飼い主様が二の足を踏まれるのもお気持ちはわかります。しかし、実際のデンタルケア、特に歯石除去に関しては歯周病が進行してから行うものではなく、ひどくならないように予防的に行う事こそが重要です。汚れの程度や年齢等によって実施の推奨は変わりますが、少なくとも「これはやってあげた方がいいですよ」と私が飼い主様にお話しさせてもらった時は、"予防歯科"ではなく"治療歯科"の領域に入ってしまっていると考えていただければと思います(;^_^A



慢性下痢の厄介者は、やはり厄介極まれり


以前にもお話しさせていただきました「厄介なお腹の寄生虫、猫トリコモナス」ですが...本当に厄介です😢

トリコ~1.JPG「こんにちは、再び登場の厄介者です」

今現在この厄介者に悩まされているのは、10か月齢の猫ちゃんです。3か月半齢でショップさんから飼い主様の元へ来た子です。

この子はお家に迎えた当初から軟便~下痢が続いているとの事で、自宅に迎えてから2週間後に当院を受診されました。

子猫ちゃん...元気食欲はあり...頻回便...粘液便もある...臭いが強い...ショップさんから迎えた当初から...

お話を伺っている最中からチラッチラッと脳裏に浮かぶ厄介者の影が。糞便検査を主として診察を進めていくと...

やっぱり出ちゃいました、トリコモナス😢しかもこの時はジアルジアという別の寄生虫も認められました。

以前は子猫の寄生虫といえば回虫やコクシジウムという寄生虫に遭遇する機会がほとんどでしたが、最近はトリコモナスやジアルジアなどの便検査では検出しにくい寄生虫によるものが多いです。残念なことに、その大半がペットショップさんから購入された1か月以内に検出されてしまいます。感染力が強く、また検査による検出率も低い為に対応が後手に回ってしまう事も原因の一つと思われます。

この猫ちゃんは来院時に『疑いようがないくらい沢山いる』という顕微鏡結果でしたので、投薬治療が始まりました。

苦くて有名(?)なメトロニダゾールの服用により一度は症状が改善、院内検査ではトリコモナスが検出されなくなった為投薬を休止して、消毒などを継続的に注意して行っていただくよう飼い主様にお伝えしました。

それから約3週間後...再び軟便と頻回便との事で来院。調べると再び『疑いようがないくらい沢山いる』厄介者。

この日以降、本日に至るまでまだ厄介者との戦いは続いています。メトロニダゾールからチニダゾールに変更して投薬をしますが、投薬によって姿を消すのですが、症状は完治はせず、そしてまたしばらく後に姿を現します。

便の遺伝子検査も行いましたが、検査を実施した時にはトリコモナスは陰性で、クリプトスポリジウムという寄生虫が陽性となってしまっていたのでこちらの治療も行いましたが、やはり改善は乏しく。

食事療法、サプリメント、環境整備など色々と試していますが下痢は続き...最近の検査ではこのような状態でした。

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画質が悪いのはご容赦ください。顕微鏡で便を見ている様子ですが、ひらひらと動くあるいは集団でうごめいているのがトリコモナスです。

ご家庭内に同居の猫ちゃんがいるので、この子達との間で感染サイクルを作ってしまっている可能性は十分にあります。生活環境を当面の間は完全隔離、使用するアイテム(食器、トイレ、タオル)は共有せずに、ひたすら消毒して...そういった事が徹底できれば良いですが、実際にはそうもいかない点もあります。だからこそ長引いてしまっている点もあります。寄生虫感染以外の慢性下痢の原因(食物アレルギー等)も考えてはいますが、決め手に欠けています。

継続して寄生虫対策は行っていきますが、今後は別の検査アプローチも検討していきます。



夏場は皮膚のトラブル多発な季節です


今年は長梅雨の影響で、例年以上にジメジメ感が強いですね。

昨年は梅雨が極端に短く猛暑日が続きましたが、今年は冷夏といっていい気温ですね。今週末くらいに梅雨明けの兆しが見えてくるといいのですが...

夏は気温と湿度の影響で、皮膚病が多発する時期です。動物病院に来院される患者さんの半数以上が皮膚病関連を占めるようになってきます。皮膚病といっても勿論内容は様々です。アレルギー(食べ物・環境)症状、寄生虫の感染、細菌の感染、カビの感染、免疫異常、腫瘍性、精神的な要因など原因は多岐に及びます。

痒みの症状が飼い主様が最も気づきやすいものと思われます。そして最も痒がっている場所をよく見てみると、皮膚が赤くなっていたりかさぶたが出来ていたり、フケが多く出ていたり、場合によっては動くものが見えてしまったりと...💦

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この猫ちゃんは痒みは強くはないものの、写真のようなかさぶたが広がってきてしまったということで来院されました。

検査の結果、皮膚糸状菌というカビが検出されました。このカビは伝染性がある為、同居の猫ちゃんにも類似の症状が見られ、その子も同じ病気でした。

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このワンちゃんは、両腋周辺を主に痒がり、その他にも全身的に(足先やお尻周り、顔など)痒みが見られていました。しかし、背中にはあまり病変が見られません。各種検査の結果、アレルギー性皮膚炎と診断し、治療を行っています。

写真はないのですが、今年の夏はノミの大量寄生によるノミアレルギー性皮膚炎のワンちゃん・ネコちゃんが何件か見られました。毛をかき分けて地肌を見ようとすると、さぁーーーと動くノミが...不謹慎ながら、「となりのトトロ」の「まっくろくろすけ出ておいでー」のくだりを想起してしまいました。

飼い主様やご家族様にも痒みが見られているため、お家に入り込んでしまったノミを駆逐するのは相当大変な労力となります。「室内飼育でお外にはあまり出ないから、まさかノミがいるとは思わなかった」とほとんどの方が仰っていました。どのような隙をついて虫が侵入してくるかはわかりません、予防できるものなので、しっかりと皆さんにも予防を行っていただきたいと強く願うものです。

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このワンちゃんは、腰~お尻あたりに大きな皮膚病変ができてしまい、毛が抜けてしまいました。皮膚も非常に赤々しく、痒みや痛みも大分あったと思われます。しかし元々の性格が我慢強い子、診察時に病変部を調べるときもちょっと迷惑そうな表情はしていたかもしれませんが、大人しく検査に協力してくれました。

一般的な皮膚検査を行い1週間ほど内服による治療を行いましたが改善の兆候が全くみられなかった為、皮膚組織の一部を採取して検査する組織生検を行いました。その結果、皮脂腺炎という免疫異常に因る珍しい皮膚病という事がわかりました。皮脂腺炎の治療開始することで症状は改善がみられ、

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まだ抜けてしまった毛が生えそろうには時間がかかりますが、赤みやただれ、痒みも今は落ち着いており、治療を継続しています。頑張っていこうね!!

皮膚病はぱっと見でわかるものもあれば、そうでないものもあります。症状は類似しているけれども最初に疑った疾患とは全く違うというケース(皮脂腺炎のワンちゃんがそうでした)もあります。原因によって治療のアプローチ方法は勿論変わってきますので、なかなか治らない皮膚病変や長く続いているものなどは、積極的な検査を行って原因を調べていく事をおすすめします。



2019年の七夕飾り


今年は諸般の都合により、毎年七夕の時期に実施していた当院があります商店会のイベントは残念ながら行われません。

イベントの実施はありませんが、病院は外側に向けてのみになってしまいますが、例年のように七夕飾りをしています。

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今年の七夕当日は天の川が見れるかかなり怪しいお天気状況ですし、雨続きでジメっとした気持ちになってしまうかもしれませんが、気持ちを上げて長梅雨を乗り越えましょう!!

先日、避妊手術の依頼を頂いた6か月のワンちゃんですが、手術前の診察で鼡径ヘルニアが両側に見つかりました。

鼡径ヘルニアは放置しておくと最悪は腸や膀胱が入り込んでしまい、壊死を起こしてしまう事もあります。

鼡径輪という血管や神経を通す穴があるのですが、そこが広がってしまったりして本来は出てはいけないものが出てしまうのが鼡径ヘルニアです。多くはお腹の中の脂肪であり、膨らみを押したり姿勢を変えたりすると膨らみが引っ込み、そしてまた出てきてしまいます。

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写真だとわかりづらいですが、丸で囲んだ部分がふっくらとしています。

今回は避妊手術の際に同時にそちらの整復も行い、また乳歯も沢山残っていたので一緒に行いました。

鼡径ヘルニアや臍ヘルニア(いわゆる"でべそ")、そして乳歯遺残も若齢の早い内に対処しておくことで将来的なリスクや弊害の抑止・低減につながりますので、気になることがありましたらご相談下さい。



唾液腺嚢胞の猫ちゃんの一例


唾液は食べ物の消化に大きく関わっているという事はご存じの通りと思われます。特に炭水化物を分解するアミラーゼという消化酵素を含んでいますので、「お米を噛んでいると甘くなってくる」というのはお米のでんぷん質がアミラーゼによって分解されて、糖の一緒であるブドウ糖に変化するからです。こういったように食べ物を消化酵素の力で体に吸収しやすい形へ変化させる役割があります。

その他には、細菌の繁殖を抑える働きをもった各種の酵素を含んでいます。「唾をつけておけば治る!!」というのは昔から存在する金言ですが、強ち嘘でもないですが、かといって絶対的に正しいわけでもなくですが...ちょっとした擦り傷程度ならばよいかもしれませんが、傷口に唾の治療の過信は禁物です。

犬猫に関していえば、傷口を舐める事で良くなることは一切ありませんので、先程の金言が動物には決して当てはまらない事をご理解下さい。大抵の場合は、傷が化膿したり広がったりしてひどくなることがほとんどです。

他にも唾液の役割は様々(虫歯・歯石の予防、口の乾燥防止、食べ物の輸送などなど)です。この唾液を作り出して分泌する唾液腺というものは、複数存在します。

犬猫においては、下顎腺・舌下腺・耳下腺・頬骨腺という主に4つの唾液腺があり、それらが左右に存在します。

今回の猫ちゃんの病名である唾液腺嚢胞とは、この4つの唾液腺の何れかあるいは複数が何らかの原因で損傷してしまい、本来は口の中に規律的に分泌される唾液が別の場所に漏れだしてしまい、唾液が貯留してしまうものをいいます。

何故損傷して漏れ出してしまうのかの原因は不明なことが多く、ケガや事故などによる事もありますが、ほとんどは何故そうなってしまったのかがわからず、気づいたら溜まっていたというケースがほとんどです。

どの唾液腺が損傷するかによって、以下のように分けられます。

KIMG0667.JPG(インターズー ステップアップ犬と猫の臨床歯科 より)

唾液腺嚢胞は、その多くが犬に発生します。今回は猫ちゃんのケースとなりましたが、個人的な経験では猫ちゃんの唾液腺嚢胞は初めてでした。

唾液腺嚢胞の治療は、溜まってしまった唾液を針を刺して吸引する事で緩和処置が可能です。しかし、一時的に貯留したものが無くなっても近い内に再発してしまう事が大半です。中には数回の吸引を繰り返している内に再発しなくなるケースもあります。舌下粘液嚢胞や咽頭粘液嚢胞などは鎮静処置などを施さないと吸引する事が困難な事もあります。

再発を防ぐ目的での治療としては、問題となっている唾液腺を切除する事です。

粘液嚢胞の多くが舌下腺の損傷に起因しているため、この唾液腺を目的に切除します。しかし、舌下腺は下顎腺という別の唾液腺に付随していて境界線が不明瞭な為、下顎腺と舌下腺の両方を摘出する事が一般的です。

舌下腺の損傷部分がどこなのかはほぼ判別不能な為、「なるべく唾液腺の奥の方で切除する」ということになります。

今回の猫ちゃんは、朝気付いたら腫れていたとの事でした。特に本人が気にする様子はなく、何か怪我を負うような事も一切ありませんでした。

数回の吸引抜去を試みましたが、何れも1週間以内で再貯留してきてしまう為、唾液腺の切除を行いました。

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線で囲った部分が唾液が貯留して腫れている部分です。

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上が切除した下顎腺(左側)と、舌下腺(右側に小さくくっついているもの)になります。(セピア色に加工しています)

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術中に貯留していた液体を吸引しました。約9cc程貯留しており、以前には最大で15cc貯留していました。

手術により治癒する事が多いですが、再発の可能性が完全には払しょくできないため、今後も経過を見ていく必要性があります。

あまり遭遇する機会の少ない猫ちゃんの唾液腺嚢胞でした。



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