院長ブログ

帝王切開を実施した一例


今回は、先日に帝王切開を実施した例となります。

繁殖をされている方がお連れいただいたトイプードルの子ですが、過去に3回の妊娠を経験しており、そのいずれもが帝王切開による出産だったようです。毎回妊娠するのは1頭のみだったようで、お腹の子が大きくなりすぎて自然分娩はできなかったようです。

今回連れてきたもらった当初は妊娠診断でしたが、今回も1頭のみの妊娠でした。

過去の履歴から、通常の出産予定日を考慮して、計画的帝王切開を実施する事にしました。

幸いにも帝王切開予定日当日に母犬の体温が低下する、出産前の兆候がちょうど見られた為にタイミングとしてはバッチリでした。

手術準備をして、母犬の負担が少ないよう直前までは自宅で待機しててもらい、準備ができたら来院していただいて即座に手術前検査と処置を行います。

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手術前のレントゲンでは、お腹の子は事前検査通りに1頭のみです。

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骨盤の大きさと胎子の頭の大きさを測定すると、やはり自然分娩は不可能でした。

通常の手術と同様の麻酔ではお腹の中の子が眠ってしまい覚醒が悪くなってしまう為、異なる麻酔の組み合わせで手術を行います。

既に数回の帝王切開を実施している子でしたので、子宮には複数個所の過去の手術後の治癒過程で生じた癒着の痕跡が多数見られ、それらを少しずつ剥離しながら子宮を腹腔外へ引っ張り出し、胎仔を摘出しました。

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摘出後はスタッフに胎仔を預け、自分で呼吸ができるようになるまで温め、酸素補給し、刺激を与えて自発を促します。「うみゃー」と声上げたら一先ずは安心。写真は産声を上げた後の子犬の様子です。(母犬はまだこの時は別室で手術中)

手術が終わり、母犬が麻酔から無事にさめたところで子犬のチェックです。

今回誕生したこの子には、先天性二次口蓋裂が認められました。口蓋裂とは、口の中の上あごに隙間がある為に鼻と口が連絡してしまう奇形の事です。この障害があると、うまく哺乳する事ができないために成長不良や誤嚥性肺炎を起こしてしまう事が多く、通常の飼育では生存が困難です。チューブを使って直接ミルクを投与するなどのお世話をしてあげないと早期に亡くなってしまいます。隙間を塞ぐ手術はある程度大きくなってからでないとできない為、その月齢まで頑張って欲しいと願います。

来院から手術、母犬が覚醒してからしばらく様子を見て、その後帰宅して自宅で様子を見てもらう事になります。病院滞在時間は約3時間の出来事でした。



肢端に発生した悪性腫瘍の例


今回は、肢の指に発生した腫瘍の一例になります。

数日前から左前肢の跛行の症状が見られていたとの事で来院されました。

診察をすると、左前肢の小指の先端が著しく腫れています。腫れているので、この足を地面にぐっと負重をかけると痛くなってしまっていたのです。

指先の腫れには爪のケガからの感染や皮膚炎などからの化膿も多いですが、今回のケースでは外見上の第一印象から何となく悪い予感がしていました。

レントゲンを撮ると

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小指の部分が腫れているのがお分かりいただけるかと思いますが、問題はその部分にある指の骨が融けてしまっている事です。爪を支える骨は既に無くなってしまっています。

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こちらは反対側、正常な右側となります。比べると骨が融けてしまっているのがわかります。

レントゲン結果から悪性腫瘍によるものと判断し、幸い他の指にはまだ影響が及んでいないと考えられましたので早期の外科的な介入を相談させて頂きました。外科的な介入といいましても、その方法は問題となっている指を切除する手術です。有るものが無くなってしまうという事はなかなか決断がしにくい事だと思われますが、放っておくと更に拡大あるいは遠隔転移してしまう恐れもあります。

この日は手術の決定には至らず、飼い主様にはしばしお考え頂く事になりました。

後日、手術の実施を決断していただき、問題の小指の切除を行いました。

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上は手術当日のレントゲンです。最初の撮影から約10日程経過していますが、骨の融解が進行しています。

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手術にて、小指を腫瘍ごと切除して縫合しました。

ワンちゃんの足の指は、親指を除いて、4本の指の中央2本が主に体重を支える指(中指と薬指に該当)となります。今回は小指となりますので著しい歩行障害にはならないですが、それでもしばらくの間は歩行に違和感は見られてしまうでしょう。

今回の腫瘍は、犬で指先に発生しやすい悪性腫瘍の扁平上皮癌でした。当初からこちらの腫瘍を疑っていましたが、検査結果からは扁平上皮癌の他に悪性黒色腫も存在していました。手術マージンは確保されており、術前検査で遠隔転移の所見も見られませんでしたが、今後も転移・再発に対する経過観察は必須となります。



見た目はそんなに、でも実は...?な歯の症例


今回の例は、歯石除去を行ったワンちゃんです。

外観上の歯石の量は、部分的に多い箇所はあっても口全体としてみた場合は「少な目」と評価される程度でした。

お口の臭いは多少はありますが、強く感じる程度でもありません。

飼い主様が気になる点としては、「以前に比べて固い物を噛まなくなった」「口の辺りを触るのを嫌がる」という事がありました。

年齢は中高齢であり、口とは別件で麻酔をかけなければならない事があった為、ならば一緒にお口の掃除もしましょうということで処置を行いました。

事前の麻酔前検査に問題はみられませんでしたので、処置当日は麻酔に備えての準備をし、いざ実施。

麻酔がかかったところで口を大きく開けて中をチェックし、レントゲン撮影を行います。

部分的に歯石が多く付着している歯がここでした。

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上側の第4前臼歯という歯ですが、この歯は汚れが付着しやすく、トラブルを起こしやすい歯です。歯茎も赤く腫れていますね。

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反対側の歯も、同じ部分の歯が同じような状態でした。

レントゲンを撮ってみると・・・

左上第4前臼歯.png(左)右上第4前臼歯.png(右)

KIMG0924-1.jpg(左の歯の内側)

固い物を噛まなくなった原因は、この二つの歯が割れて痛みを感じていたからでした。

割れてしまった部分から汚れ、細菌の増殖が起こり、歯肉炎や歯石の付着を招いていたことになります。他の歯の歯石の付着がさほど多量でないにも関わらずこの歯だけ多かった理由はこういうことになります。

固いオモチャを噛むのが好きということでしたので、思い切り力を入れて噛んでいる内に圧力に負けてしまい、割れてしまったのでしょう。残念ながら割れてしまい歯髄に損傷が見られた今回の歯は両側とも抜歯する事になりました。

歯のお掃除や、ストレス緩和を目的として様々な「噛み噛みアイテム」があります。デンタルガムは代表例ですが、その材質も食べれる物(牛皮や、成型したものなど)でしたり、木材、硬質ゴムなど様々です。噛ませるデンタルケアは、物理的に歯の表面に接触する事で汚れを除去し、歯石の付着を防ぎます。素材によっては、細菌の繁殖を抑えたり口臭を抑える成分なども含まれているものもあります(当院でご紹介させていただくデンタルガムはこういったタイプです)。

噛ませるデンタルケアならばどれでもよいという事ではなく、体格(口の大きさ)、噛む頻度、噛む力などを考慮しなければなりません。例えば、小型犬の子に大型犬用のデンタルガムは大きすぎますし、その逆は小さすぎて丸飲みしてしまう恐れがあります。適切な大きさでも、食べられるタイプのものであれば噛んでいると次第に小さくなってきますので、丸飲みしてしまわないように小さくなってきたら勿体ないかもしれませんが新しいものに取り換えるという対応も必要になります。

やたらと噛むのが大好きな子で、かなりの力加減で噛んでいる子には固すぎるタイプの噛みアイテムは不向きです。個人的な見解になりますが、蹄や牛骨、硬質プラスチックなどのアイテムは害はあっても利は無しと思っております。

デンタルケアも含めて、噛み噛みアイテムを使用する際にはワンちゃんそれぞれに適するタイプ、大きさのものを選択していただきたいと思います。



🐭明けましておめでとうございます🐭


🎍新年あけましておめでとうございます🎍

昨年は皆様に大変お世話になりました。

心より、感謝申し上げます。

本年も、どうぞ宜しくお願い致します。

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さて、今年の冬は暖冬で各所で雪不足によるニュースが見られます。夜~明け方の冷え込みが強くはなってきましたが、例年と比較するとまだ緩やかだなと実感します。待合室のガラスが大きい当院ではそれなりに冷え込んでしまいますが...😓

暖冬の時はこのまま雪が降らずに春を迎えるか、2月頃に一気に気温が下がってドカ雪になるかのどちらかになるのでしょうか。雪が降れば子供達は大喜び、大人は色々とゲンナリです。雪遊びで何時間も外で遊び回っていた子供時代を「何で昔はあんなことができたのかなぁ」と懐古しながら、ストーブの前で正座して過ごすぐらいに齢は重なってまいりました。昨年は体調不良で臨時休診を頂くなどがありましたが、今年は私自身も健康に気を付けながら過ごすようにしないといけません。(お恥ずかしながらそれでも体調崩した際は、そっと"お察し"してくださるとありがたいです)

動物も飼い主様も含め皆様が、今年一年元気に過ごせます事をお祈り申し上げます。



抜歯が好きです♪、という事は全くないです😓


涼しくなったと思って薄手の長袖を着た翌日にはTシャツ1枚でも汗をかく...そんな気温のアップダウンが続いていますが、ようやく秋めいた気候になる・・・ようですね、天気予報ではそう言っていました💦。

昔と異なり、現代の天気予報の精度は高いのでしょうがイレギュラー要素(ゲリラ豪雨やら、世界的な温暖化による気象変動)が強くなってきて、予報が難しくなってきてるのでしょうね。

気温変化も含めての季節の変わり目は胃腸器症状が増えることが多くなります。お腹を冷やしてしまうという点もありますが、気温変化に体がうまく馴染めずにストレスになってというケースが多いのでしょう。

さて、現在病院では秋の健診キャンペーンを実施中です。11月末までのキャンペーンとなりますので、是非ご利用ください。

健診をされた特にワンちゃんの多くには、歯周病・歯石の付着が高頻度に見られます。ここ最近の当院の歯の処置でも、歯石除去だけでは対処できずに抜歯、それも結構な本数をせざるを得ない例が何件が続いています。

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このワンちゃんは2年前に一度当院で歯の処置をしております。その時にはほぼ全ての奥歯を抜歯せざるをえない状態でした。(写真の上下の奥歯がないのがおわかりただけると思います。)

このワンちゃんはデンタルケアの有無に関わらず、口腔内の環境そのものが歯周病になり易い要因となっているようです。人で言えば「虫歯になり易い体質」というところでしょうか。シニア年齢ではありますが、お年を大分召しているという年齢ではありませんが、歯の状態はかなりダメージを負っていました。犬歯には歯石と汚れが付着しています。

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犬歯を抜歯したところです。犬歯を抜歯する際は通常は歯茎を切開して歯槽骨というものを削ってから抜歯するのですが、そういった処置をしなくても抜けてしまうほどに痛んでしまっていました。ぽっかりと穴が空いてしまっており、この穴は鼻と繋がってしまっています。また白く膿のような汚れも洗浄すると沢山排出されてきました。

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抜歯した穴は、歯茎の粘膜が欠損していた為に上唇の裏側からの粘膜を蓋代わりとして縫合しました。

また次は別のワンちゃんです。このワンちゃんはご高齢な子で、くしゃみがひどいとの主訴でご来院されました。

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このワンちゃんも奥歯、そして犬歯もかなり痛んでしまっていました。レントゲンを撮ると歯を支える骨が溶けて薄くなってきていましたので抜歯は避けられない状態でした。

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奥歯は全て、そして犬歯も両側の上は抜歯しました。やはりくしゃみの原因となっていた為に、鼻と口の部分が繋がっていました。洗浄するとびっくりするくらいの汚れが...💦長年蓄積したものが取れてスッキリしたなら何よりです。

なかなか歯磨きは難しい点もあります。歯石取りは麻酔が不可欠な為に、飼い主様が二の足を踏まれるのもお気持ちはわかります。しかし、実際のデンタルケア、特に歯石除去に関しては歯周病が進行してから行うものではなく、ひどくならないように予防的に行う事こそが重要です。汚れの程度や年齢等によって実施の推奨は変わりますが、少なくとも「これはやってあげた方がいいですよ」と私が飼い主様にお話しさせてもらった時は、"予防歯科"ではなく"治療歯科"の領域に入ってしまっていると考えていただければと思います(;^_^A



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