肢端に発生した悪性腫瘍の例


今回は、肢の指に発生した腫瘍の一例になります。

数日前から左前肢の跛行の症状が見られていたとの事で来院されました。

診察をすると、左前肢の小指の先端が著しく腫れています。腫れているので、この足を地面にぐっと負重をかけると痛くなってしまっていたのです。

指先の腫れには爪のケガからの感染や皮膚炎などからの化膿も多いですが、今回のケースでは外見上の第一印象から何となく悪い予感がしていました。

レントゲンを撮ると

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小指の部分が腫れているのがお分かりいただけるかと思いますが、問題はその部分にある指の骨が融けてしまっている事です。爪を支える骨は既に無くなってしまっています。

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こちらは反対側、正常な右側となります。比べると骨が融けてしまっているのがわかります。

レントゲン結果から悪性腫瘍によるものと判断し、幸い他の指にはまだ影響が及んでいないと考えられましたので早期の外科的な介入を相談させて頂きました。外科的な介入といいましても、その方法は問題となっている指を切除する手術です。有るものが無くなってしまうという事はなかなか決断がしにくい事だと思われますが、放っておくと更に拡大あるいは遠隔転移してしまう恐れもあります。

この日は手術の決定には至らず、飼い主様にはしばしお考え頂く事になりました。

後日、手術の実施を決断していただき、問題の小指の切除を行いました。

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上は手術当日のレントゲンです。最初の撮影から約10日程経過していますが、骨の融解が進行しています。

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手術にて、小指を腫瘍ごと切除して縫合しました。

ワンちゃんの足の指は、親指を除いて、4本の指の中央2本が主に体重を支える指(中指と薬指に該当)となります。今回は小指となりますので著しい歩行障害にはならないですが、それでもしばらくの間は歩行に違和感は見られてしまうでしょう。

今回の腫瘍は、犬で指先に発生しやすい悪性腫瘍の扁平上皮癌でした。当初からこちらの腫瘍を疑っていましたが、検査結果からは扁平上皮癌の他に悪性黒色腫も存在していました。手術マージンは確保されており、術前検査で遠隔転移の所見も見られませんでしたが、今後も転移・再発に対する経過観察は必須となります。



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