2021年5月


腸閉塞(ゴム片)の猫ちゃんの一例


前回に続き、猫ちゃんの異物による腸閉塞です。

今回の猫ちゃんの閉塞の原因はゴム片でした。詳細に何のゴム片だったかはわかりませんが、パズルマットや滑り止め等の一部ではないかと想像しています。

前日からの食欲低下と複数回の嘔吐を主訴に受診されました。

初日での診察、レントゲン検査では原因がはっきりとは判別ができずこの日は対症治療のみでしたが、翌日以降も食欲不振が改善せず、再診時に改めてレントゲン検査と超音波検査を実施すると、その時には初日では見つけることのできなかった"閉塞"を疑う所見が出てきました。

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レントゲン画像では、初日と比べると腸の中に空気(黒い筒状)の貯留が明らかに増加していました。

よく見ると、少し怪しい影も...?というところでしたが、レントゲンでは確定ができなかった為に超音波検査へ。

異物1.JPG

腸の一部分の超音波検査画像ですが、前回の糸での閉塞の猫ちゃんは超音波検査でも断定ができなかったのでバリウム造影検査も実施しましたが、今回の猫ちゃんはこの画像から異物閉塞が断定できました。

異物①.jpg

赤線の部分が異物です。この画像の前後の腸の関係性もありますが、この所見にて異物閉塞を断定し、血液検査、術前輸液を実施した後に手術を即日実施致しました。

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(画像の色調を加工しています。)線で囲った腸の部分が不自然な形状をしており、また触ると内部に固い物がガッチリとはまっています。

KIMG1536.JPG

これが閉塞の原因です。長さは3cm程です。

摘出直後は胃酸などの影響で表面は固くなっていました。洗浄して正体を確かめると、弾力性があり、ゴム片と判明しました。

数年前にパズルマット片で閉塞を起こした猫ちゃんの例がありますが、それと類似のケースとなります。

ゴム片が何なのか、そしてどこにあったものかは飼い主様にも不明との事です。

猫ちゃんだけでなくワンちゃんもそうですが、どこから何をもってきて齧っているのか飲み込んでいるのかを全て把握するのは難しいです😢

普段の生活の中で、そういったイタズラしやすいもの・していているもののチェックは日頃から観察して頂くようにお願い致します。



腸閉塞(糸)の猫ちゃんの一例


猫の誤飲などによる腸閉塞で多いものは、オモチャ、糸、パズルマット、果物の種、消しゴム等々があります。

以前に当院では誤食ではなく、毛玉による例とパズルマットによる例の猫ちゃんをブログに記載したことがあります。

今回は、その誤飲の例の中でも多く、そして上記に挙げたものの中で最も怖い"糸"が原因だった例です。

若い年齢の猫ちゃんですが、数日前からの食欲低下と食後の嘔吐を主訴に来院されました。

受診初日では明らかに腸閉塞を疑う所見に乏しかったですが、後日に改めて診察させてもらった際にレントゲンで怪しい箇所が見られました。

無題.jpg

画像を見易く加工していますが、どこが怪しいかわかりますか?

怪しい部分は、2か所です。

小さい赤丸部分は、何か怪しい影が...

大きい赤丸部分は、腸が"くしゃ"と畳まれているような所見になっています。

InkedInkedLI_LI.jpg

確認の為、造影剤を用いての撮影を実施しました。

Inked_LI.jpg

造影剤を流すと、食道から胃に向かって一直線に造影剤が見られます。通常ならばこのような画像は絶対ありえません。

この画像から、「腸閉塞を起こしており、その原因は間違いなく糸」と判断できます。

実際に麻酔を行い、口の中をよく確認してみると舌の根元に糸が引っかかっているのが確認できました。

KIMG1529copy.jpg

この後、胃及び腸の複数個所を切開し、糸を摘出しました。

KIMG1531.JPG

糸の全長は計測していませんが、2m以上はあったと思います。

術後は回復も早く、嘔吐も一切見られなくなりました。数日の入院後、元気に退院していきました。

元々、糸で遊ぶ癖があったようでしたので、今後も飼い主様には周囲を注意して見ていただくようにお伝えしました。

先程挙げた異物の中で、何故に糸が最も怖いかというと、閉塞を起こして影響を及ぼす範囲が非常に広くなってしまう事が理由の1つとしてあります。また、糸単独ではX線ではなかなか確認しにくいという事もあります。

糸を飲み込んだ際に、時々お尻からちょろりとでてくることがあります。軽く引っ張ってススッ~と糸が取れる場合には問題ありませんが、途中でググッという抵抗感が見られた場合には決して引っ張らないでください。途中で引っかかってしまって、最悪そのまま引っ張ると腸を裂いてしまう恐れもあります。

糸、紐、長い髪の毛など、決して侮るなかれです。



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