子宮蓄膿症のワンちゃんの例 2020年11月


疾患そのものに特に季節性はないのですが、なぜか例年、10月~1月頃に当院で度々遭遇する疾患があります。

子宮蓄膿症です。

避妊手術をされていない中高齢の子に見られ易い病気です。過去にも何度かブログで掲載させてもらっていますが、ほとんどは10歳前後のケースです。個人的な経験上で最も若かったのは5歳の子での発症がありますが、むしろその年齢の頃は珍しい方でしょう。

避妊手術を行っていない場合に必ず発症してしまう病気ではありませんが、やはり実際に発症すると高齢の事が多く、そして症状も進んでしまいます。

子宮蓄膿症を予防する方法は勿論、健康な時に避妊手術を実施する事です。

不幸なことにこの疾患になってしまった場合には、基本的には手術が必要になります。内科的な治療で管理できる例もありますが、個人的にはほとんどありませんでした。できたとしても多くが再発傾向にあります。特殊なホルモン剤注射(国内では取り扱いが無く、海外からの輸入が必要。当院では取り扱いはありません)を用いての治療で奏功した報告例もありますが、使用できる場合には条件が幾つかありますので全ての子に適用できるわけではありません。

子宮蓄膿症の手術は、術式そのものは避妊手術の発展型なので物凄く難しいという術式ではありません。しかし、体内に膿がたっぷり溜まってしまっていて状態が悪い状況ですので、『避妊手術と同じ方法だから簡単』という事は絶対的にあり得ません。万が一膿が溜まった子宮が破裂してしまっていたら、それは非常に危険な状態に陥ってしまいます。たまにネット記事やブログなどでこのような事が書いてあったりしますが、決して簡単な手術ではないんですよ...😿

「もしかして子宮蓄膿症...かも?!」と飼い主様が早期に気付いて頂く為には、下記の症状を覚えていただきたいと思います。これらに該当する項目が多ければ、子宮蓄膿症の疑いがありますので早期に病院を受診してください。

避妊手術をしていない。

年齢が中高齢である。   ※若齢でも発症はあります

発情出血が2か月以内にあった。

水を飲む量が多い。

食欲が減ってきた。嘔吐がある。

下痢や軟便が続いている。

身体を触ると少し熱っぽい。

陰部をよく舐める。

陰部からおりものが出ている。

腹部が少し張っている気がする。

これらの症状が見られる事が多いので、気を付けてみてあげてください。オレンジ色の症状は、割と多い所見です。

今回の子は13歳のトイプードルちゃんです。最初は発熱と食欲不振を主訴に来院されました。幾つかの問診から子宮蓄膿症を疑いましたが、初診時の超音波検査では子宮に異常が認められませんでした。内科療法を行いながら経過をみていましたが、次第に症状は悪くなり、再度超音波を実施した際には子宮内に液体貯留所見が見られた為に、手術へ治療を移行しました。

(以下、臓器の写真が出てきます)

KIMG1346.jpg術中所見

KIMG1348.jpg摘出した子宮

KIMG1350.JPG子宮内に貯留していた血膿

子宮内の膿を調べたところ、なかなか厄介な細菌が検出されてしまい、現在も投薬治療中です。

この子は最初の受診の際には子宮蓄膿症を疑って検査しましたがその確定は得られず、経過かと共に症状が表に出てきた例です。

繁殖の予定がない場合は、出来る限り避妊を行う事を推奨いたします。



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