🐈猫ちゃんの慢性歯肉口内炎
猫ちゃんに多い病気の1つに、慢性の難治性歯肉口内炎があります。
この病気は犬にはあまり多くはなく、ほぼ猫に特有なものとして見られます。
年齢と共に歯石の付着が多くなり、口腔内の環境が崩れてしまう事で歯肉炎や口内炎が見られる事は人も犬も猫も同様に見られます。しかし、猫の場合には年齢を問わずに治療に反応の乏しい慢性の口腔内炎症が良く見られます。
原因はウイルス感染、細菌感染、免疫の異常、栄養不良、食事内容の偏り、慢性腎臓病、ストレス、体質(遺伝的な要素)などの複合的なものが考えられています。
多くの場合は3~4歳以降で徐々に症状が見られてくる事が多いですが、それよりも若い年齢で病状が見られる事もあります。
症状は、食事をする際の痛みや食欲の低下、口臭がきつくなった、涎が多くなった、歯ぎしりのようなギシギシという音がといたものがあります。病院に来院されるキッカケの一番多いものは、食事の際の痛みが顕著になったという症状です。
食事のたびに痛みを感じると、食事する事=痛い事と思うようになってしまい、食欲の低下から更なる病状や全身状態の低下に繋がってしまいます。
慢性の歯肉口内炎の場合、先ずはその状態を確認するところから始まります。
原因が腎臓疾患や食事性などの場合には、それらを治療していく事で口腔内の環境が改善していくことが期待できるためにそちらを優先します。
しかし、慢性の歯肉口内炎として他の疾患の関与が乏しかったり、原因が明らかでない場合には下記の治療を行っていきます。
症状が軽度~中程度であれば、消炎剤や抗生剤といったお薬や、口腔内の環境を整えるサプリメントなどを併用した内科治療を行います。炎症が強い場合には一時的にステロイド剤を用いる事もあります。投薬治療は長期に及ぶことが多い為、抗生剤やステロイド剤などの長期使用にはマイナス面もある為に、投薬による弊害も考慮しなければなりません。
しかしこうした治療でも改善が見られなかったり、投薬による弊害が問題となってきたり、或いは既に内科対応の域を超えてしまっている病状の子には、外科的な処置を行う必要があります。
慢性の難治性歯肉口内炎の外科的な治療には、『全臼歯抜歯』と『全顎抜歯』があります。
抜歯をする事で歯肉炎の発生・症状をコントロールする治療法が確立されています。
『全臼歯抜歯』の場合の改善率はおおよそ50~70%、『全顎抜歯』の場合は90%程といわれています。
歯肉炎=全部を歯を抜けば治る、という事では決してありません。これらの治療を行っても改善しない例は少なからず存在します。また体調、歯や顎の骨の状態によっては施術ができないという場合もあるので、状態を見ながら治療方針を検討する必要があります。
さて、今回は2頭の猫ちゃんの実際の抜歯をしたケースです。2頭とも、以前より歯肉口内炎が認められており、症状の強い時にはお薬を服用する事である程度の症状の軽減は見られたものの、治る事はありませんでした。それでも飼い主様と一緒に何とか食事の形状や内容を手を変え品を変えでやってきましたが、やはり口臭や摂食時の痛みが目立ってきた為に、術前検査を実施した後に抜歯処置を行う事になりました。
どちらの猫ちゃんも、既に脱落していた歯も数本ありましたが、共通しているのは奥歯の炎症が非常に強かったという事です。食べ物がこの炎症部分に当たると、痛みは相当あったと思いますが我慢強かったのでしょう。
猫ちゃんは歯磨きをなかなかさせてくれない事が多く、また口の中を覗かせてくれるのも難しい場合がワンちゃんと比べて多いのでご自宅で口の中の様子をうかがい知ることは難易度が高いでしょう。初めの方に記載させて頂いた、歯肉口内炎を疑うような症状が見られた場合には、先ず受診をしていただいて、その状態の把握からスタートしましょう。