健康診断で異常が発見された一例その2(ワンちゃんの脾臓腫瘤)


前回に続いて、今年の秋の健診時に見つかった異常でのケースリポートその2です。

今回のケースはワンちゃんです。毎年、健診を実施させて頂いている子です。

今年も例年と同様の健診コースでご依頼いただき、実施致しました。特に日常生活での大きく気になる点や変化兆候などはありませんでした。

いざ健診、各種検査を実施させて頂くと明らかに気になる点&前年の検査所見と異なるところが見つかりました。

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レントゲン検査では、赤丸の部分に前年は見られなかった陰影が認められています。続けて実施した超音波検査では、脾臓という臓器に明らかに腫瘤が存在している所見が見られました。

超音波の画像所見からの推測として、脾臓の結節性過形成あるいは血腫という良性の腫瘤性病変を疑いました。

中高齢のワンちゃんには時折見つかることがあるもので、悪性腫瘍ではなく良性の病変です。どちらも転移などすることはありませんが、大きくなってきて周りの臓器を圧迫したり、良性であっても最悪は破裂したりする事もあるので注意が必要です。

飼い主様とのご相談で、何れ大きくなることで問題が生じてしまうかもしれない可能性があるのならば、今回の健診でこの異常所見以外には大きな問題点は見られなかった事から、麻酔による外科的介入の実施は可能と判断されますので、早期の外科介入を行って予防策を講じましょうという結論になりました。

後日、全身麻酔を行い、腫瘤を含めた脾臓の摘出手術を行いました。ちなみに脾臓という臓器は、極論を言ってしまえば、切除して失ってしまっても日常生活は通常に送ることができる臓器です。血液の貯蔵、免疫系の調整などの臓器としての役割は当然に持っていますが、他の臓器でも代替やサポートが可能である為、前述のような言い方もできてしまいます。あるに越した事はありませんが。

さて、手術時においてですが、一つトラブルが発生してしまいました。実際に手術を行うと、事前の予想通りに良性の病変であろうなという外観をしておりました。順調に脾臓摘出の段取りは進んでいたのですが、その途中で腫瘤の一部が自重により一部が裂け始めてしまったのです。幸いにして、腫瘤側の方から血管を止めて進んでいたので、大出血することはなく、少しドキっともしましたが結果的にはその後の問題はなく手術を終える事が出来ました。

さて、この時点で「この程度で損傷してしまう程に脆弱な腫瘤は果たして良性の病変なのだろうか...?」と嫌な想像をしてしまいました。脾臓に発生する腫瘍(※腫瘤、という表現ではなく)は、悪性の挙動を示すものが非常に多く、難敵揃いです。超音波検査&手術時の外観から良性病変と考えていたので、このイベントがあった時からもしかするとという想像が出てきてしまいました💦

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摘出した脾臓&腫瘤になります。赤丸が腫瘤ですが、本来は右側のみで、左側は裂けて開いてしまったところとなります。

手術翌日には退院し、病理検査の結果をハラハラしながら待っていましたが...

良性の結節性過形成でした!良かった!

脾臓の良性腫瘤は時々遭遇する事のある病変で、即座に外科介入をしなければならないというものでないケースも沢山あります。

今回の件も当初はそのように思っていましたが、結果として脆弱性があったことから様子を見ていた場合にはもしかすると腫瘤が破裂して大出血を起こしていた可能性も非常に高かったと思われます。早期の手術介入を決断、同意していただいた飼い主様の判断が冴えわたったケースだと思います。

仮に脾臓に腫瘤、良性のそれが見られた場合には、必ず今後の事も踏まえてご相談させて頂きたいと思いますので受診・経過観察を宜しくお願い致します。



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