院長ブログ

乳腺腫瘍切除(片側全摘出)を実施した一例


今日の内容は、乳腺腫瘍の摘出術を行ったワンちゃんです。

この子は2か月前に右側の乳腺全摘出と子宮卵巣摘出術を実施しております。

その摘出乳腺に複数あった乳腺腫瘍の病理検査は、すべて良性の結果でした。

反対側の左にも複数の乳腺にしこりがみられた為、当初の予定通り片側切除から1か月~2か月を空けて行うことを飼い主様とご相談させて頂いておりました。

前回のこの子のお話の時にもありましたように、乳腺腫瘍はワンちゃんの場合は50%ルールというものがあります。

50%の確率で悪性か良性か、悪性の中の50%が更に超悪性か...というものです。

また非常に細胞の形態が多様な為、手術前に行う細胞診という検査では確定的な結果を得ることが難しい為に最終的な良悪の判断は摘出しての病理検査となります。

13歳というシニアのワンちゃんですが、今回も麻酔と手術によく頑張ってくれました。術後の麻酔からの覚醒が早いのが素晴らしい!

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今回の手術で摘出した左側の乳腺になります。

この中に、複数のしこり(おそらく乳腺腫瘍)が含まれています。

その中の一つはこちらです。

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一番下の乳腺部分になるのですが、丸で囲んでいる箇所にしこりがあります。

このほかの乳腺にもいくつかしこりが存在しています。

こちらは病理検査に依頼して、良性の結果であることを祈るところです。

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間隔を空けてですが、2回の乳腺摘出術を頑張った、ももこちゃんです。

非常にお利口で我慢強い子です。通常は片側全摘腫出は痛みがそれなりにあるのですが、鎮痛剤各種を使っているとは痛みを0にすることは難しいです。そのため動いたり姿勢を変えたりする時に痛みを訴えることが多いのですが、この子は静かに耐えている様子が見られます。

傷口を肢で引っ掻いてしまう事がある為、急遽作ったちょっとお古のバスタオルで腹巻を装着しています。

こちらを装着しているほうがちょっと不満そうです。

傷口の経過をみながら元気になって、早くお家に戻ろうね!!



歯石処置を実施したトイプードルちゃんの一例


新年の雰囲気も過ぎ、今日ぐらいから平常な流れになった頃でしょうか。

街のお店の中を見ると、ほんの数日前まで新年の色合いだったものが三が日を過ぎるやすぐさま2月の節分やバレンタイン、3月の桃の節句の装いにモデルチェンジ。横目に見ながら通り過ぎると、はてさて今は何時だったかしら、という錯覚に陥ってしまいますね。

さて、今日は先日に歯石処置をさせて頂いたトイプードルちゃんの例です。

昨年に歯石や歯周病の診察をさせて頂き、事前の術前検査で特に大きな問題がありませんでしたので、年明けに予定をご相談し、実施となりました。

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処置前の口腔内の様子です。上顎の奥歯に歯石の付着が目立ち、その部分の歯肉が腫れてしまっています。

多くのワンちゃんがこの子と同じ部分の歯のトラブルがあります。奥まっているため歯磨きやデンタルガムなどを噛んでいてもなかなか汚れが取れにくいということもありますし、前歯と比較して乾燥しにくく湿度が高いために細菌が繁殖しやすくなります。4~5歳以降から見えにくい部分であるこの奥歯、意識して見てあげてくださいね。

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歯石除去及び一部抜歯をさせてもらった後の様子ですが、舌の裏側の一部が腫れています。

この腫れている部分は抜歯した歯に丁度隣接する部分でした。歯肉炎の影響を受けて、慢性的な炎症が舌に生じてしまったのです。しかし特に日常生活の中で痛がる事などの支障はなかったということでした。

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上の奥歯ですが、この2本、外観はキレイに思われるでしょう。歯肉部分が腫れて出血しているのがお分かりいただけるかもしれませんが、結果的にこの歯は抜歯する事になりました。

理由は、歯周ポケットがあまりにも深く奥まであったからです。

歯周ポケットが深くなってしまうと、歯と歯肉との繋がりが緩くなってしまい、その隙間に汚れや歯石が沢山入り込んでしまう恐れがあります。歯の根元部分まで細菌が入り込んでしまうと根尖膿瘍という病態になってしまい、目の下の皮膚に穴が開いてしまう事もあります。

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先程の抜歯した歯の反対側(1枚目と同じ向き)になりますが、こちらの奥歯の歯肉部分も赤く腫れていますが、歯周ポケットは深すぎず、歯肉炎の治療は必要ですが歯の温存は可能と判断して抜歯はしませんでした。しかし他の歯に比較して歯肉の退縮がみられますので、引き続き治療とデンタルケアの介入が必要です。

今回のワンちゃんは口臭以外の症状は特にありませんでした。食べにくかったり涎が多かったりということもありませんでした。しかし気づかないうちに着々と口腔内トラブルは進行しつつある状況でしたので、このタイミングで歯石処置の実施を決められたのは良かったと思われます。



あけましておめでとうございます


新年あけましておめでとうございます。

昨年は開業に際し、沢山の方に大変お世話になりました。

そして開院してからは多くの患者様にご来院して頂きました。

皆様方のおかげで2018年を迎える事が出来ました。

厚く御礼申し上げます。

本年はより一層皆様にお力添えさせていただき、動物達と飼い主様が健康に穏やかに過ごせる時間をより多く得られるように、精進して参ります。

本年もどうぞ宜しくお願い致します。

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避妊手術頑張りました! ~夏目さん編~


子猫の時...といってもこの日の時点でもまだまだ年齢的には子猫さんなのですが、みゃ~みゃ~の時から当院へ来ていただいているmix猫の夏目さん。『おてんば娘』という表現がピッタリという様子の元気な女の子で、来院時は診察室を好奇心旺盛に色々と中を見て回っていました。

飼い主様が遠方にお引越しされたので夏目ちゃんとはなかなか会えなくなってしまうなと思っていたところ、避妊手術のご予約でご連絡を頂きました。わざわざ遠くから当院にいらしていただき、嬉しい限りです。

3か月ぶりに会った夏目ちゃんはその短期間でもググッと成長して、小さい体格のイメージが強く残っていた私としては「夏目ちゃん...か?!」と一瞬思ってしまいましたが、顔つきはまだ幼さの残る感じで本人に間違いなしでした。当たり前ですが(笑)

飼い主様と離れて少し不安そうな様子ではありましたが、そこは持ち前の性格でわりと早くに落ち着て部屋で過ごしていました。

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画像がぶれてますが、こんな感じです。『撫でてよろしくてよ』という写真ですが、この姿勢のままずりずりっと少しずつ前進してくるので、これ以上前に出てきて落ちないように地味に抑えてもいる場面です。やはりケージ内はご不満のようで、隙あらば突破口を探っておりました(^-^;

この後に避妊手術を実施させていただいて、一晩入院となります。

翌朝の夏目さん。

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『私を一晩ケージに閉じ込めた奴が来たわ』

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『ちょっと、私を外に出しなさいよーーーー(院長の白衣の裾にちょいちょいしてます)』

お迎えにいらした時も堂々とした様子でしたが、でもちょーっとイタズラする様子が見られたのでこの写真の後にアクセサリー装着を院長より言い渡されてしまいました💦

元気溢れる夏目さん、自宅でちゃんと安静ができてるかしら?一本だけ糸を自分でイタズラしちゃった、というご連絡は頂きましたが(笑)



尿道閉塞による急性腎不全の猫ちゃんの一例


人のお医者さんでは寒い時期にはインフルエンザや風邪もそうですが、泌尿器関係のトラブルが多くなります。当院でも11月下旬から気温がグッと下がってからというもの、尿路トラブルで来院される患者様は増えてきております。

その理由の一つとして、飲水量の減少があります。常に暖かい飲み物が側にあれば冬場でもちょくちょく飲むことで水分量を確保する事ができますが、通常は冷蔵庫にある飲み物をレンジで温めたりお湯を沸かして作ったりとひと手間が増えます。おまけにその準備中も状況によっては寒い...直前にコタツに入っていようものなら尚更出たくなくなってしまいますね。その結果、飲水量が減るのでオシッコを作り出す量も減ってしまう事になります。

二つ目は先程の理由と一部重なりますが、寒いのでおトイレに行く機会が減り、我慢してしまう傾向にあります。暖かいリビングから、冷え冷えの廊下を経てトイレへ...気持ちはわかります、寒いですものね。

3つ目はやはり寒い事で運動量が減ってしまい、血行や代謝などが鈍くなってしまう事です。

これらが重なり、特に1つ目の理由が大きいですが、膀胱炎が冬は多くなります。

そしてそれは人だけでなく動物も同じです。

動物の飲むお水は容器に入れてあり、入れ替える事はあってもなかなかお湯(ぬるま湯)などの飲みやすい温度で入れてることは少ないと思いますし、入れても当然時間が経てば冷めてしまいます。動物が飲む度に温めているというケースはほとんどないと思いますので、冷たくなった水を飲むことが多いでしょう。当然動物もこの季節にキンキンに冷えた水を好んで沢山は飲みたくないですし、寒いので暖かい場所にいる時間が多くなります。結果、水分量が減ってしまいます。

水分量が減ってオシッコ量減少、排尿頻度が減少するとどうなるか。人間と一緒で膀胱炎や尿路結石症を引き起こす事になってしまいます。過去にオシッコ関連でトラブルの履歴があったり指摘を受けたりした子は、この時期はオシッコの出方や量などをよく観察するようにしてあげてください。また水分摂取量を増やすために、先述のぬるま湯作戦やフードふやかし作戦などを実施してみるのも予防になります。

今回の猫ちゃんは飲水量の増減といった背景がどこまで関与していたかは難しい点もありますが、やはり尿路トラブルで来院されたケースです。

近頃吐く回数が多いので知人に相談したら毛玉が出来て吐いているのだろうから取ってあげるお薬とかサプリメントを病院でもらったらどうか、と言われたとの事で飼い主様だけ来院されました。お話を伺うと、単に毛玉による胃腸機能低下による嘔吐にしては頻度が多すぎる為、毛玉だったとしても閉塞などを起こしている恐れがあるので直接来院する事を強くお勧め致しました。

お話をさせて頂くと、飼い主様はお仕事がありお忙しいところでしたがやはり心配という事ですぐに猫ちゃんを連れて再度来院してくれました。

状況を見るや、あまりに元気がない様子でぐったりという印象でした。

お話を伺うと、ここ二日ほどオシッコの痕跡がなかったような...?との事。更に深く問診をさせて頂くと過去に尿石症の履歴があるらしい(途中から引き取った子とのことでそれ以前の情報はよくわからない)との事でした。触診すると硬く張った膀胱がありました。

直ぐに各種検査、特に血液検査を行うと腎臓の値が著しく悪化しており、またペニスの部分には血液の付着が認められたことから、尿道閉塞による急性腎不全と判断し、即時にお預かりして閉塞の解除処置をすることになりました。

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ピンク色の物体、これが尿道にコルク栓のようにつまっていてオシッコが出ない状況に陥ってしまったのです。このピンク色の物体を顕微鏡でみたものが下の写真です。

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水晶のような欠片が沢山あります。ストルバイト結晶といいます。この結晶と血液などの炎症成分が混ざり合って栓となってしまったのです。

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カテーテルを通して膀胱内に溜まっていたオシッコを出し、膀胱内を洗浄した上でカテーテルを尿道に残したまま、数日間点滴入院となりました。

幸いにもこの猫ちゃんは回復が目覚ましく、著しく悪化していた腎臓の数値は4日後には正常値に戻り、食欲も回復して排尿も自力で可能な事が確認されたので5日目に退院となりました。しかしまだ膀胱内には結晶成分が残っているであろうこと、膀胱炎は長期間の投薬が必要な為に再閉塞のリスクは残ったままとなります。引き続き注意しながら経過を見ていく必要性があります。

今回は飲水量の有無というより、体質及び食事の影響により結晶(結石)が形成されてしまい、それが原因となって泌尿器トラブルを起こしてしまった例となります。こういったケースでは治療完了後も尿石症の再発を防ぐために食事の管理が絶対に必要です。もしも怠ってしまうと、再び同じケースになってしまう例は数多くあります。

もしも仮に毛玉のせいだと思ったままでしたら、おそらく2日後には命を落としていたでしょう。最初のお話のみでは毛玉の影響或いはその閉塞という可能性が考慮されましたが、実際は胃腸トラブルではなく泌尿器系のトラブルだったのです。お話をさせてもらった後に様子を見ずにすぐに連れて来てもらった飼い主様の判断は適切でした。

実際に診察させてもらったからこそ原因が特定できたものです。このような事例もある為、当院では新規病変へのお薬のみの処方というのは行っておりません。お薬は診察をさせて頂いた上での処方となりますので、ご理解ください。

今回見られたストルバイト結晶は、リン酸アンモニウムマグネシウム結晶というのが正式名です。体質によって出来やすい/出来にくいというものが根本にあり、そこにプラスして食事成分でミネラル分が多かったり、食事内容の影響で尿がアルカリ性に傾いたりすると形成され易くなってしまいます。また膀胱炎からストルバイト結晶が形成されてしまう事もあります。

この猫ちゃんは結晶の大きさで顕微鏡で見える大きさの石でしたが、時間が経つと結石となってしまいます。ストルバイトは内科的治療により溶解が期待できる石の種類になります。大きさや種々の要因により完全な溶解が出来なかったり、無症状ながら再発を繰り返したりという例もありますが、溶解できない種類の結石(シュウ酸カルシウム結石)などは外科的対応を考慮する必要性が高くなってしまいます。

過去に尿石症で治療された経験のあるワンちゃんネコちゃんの飼い主様にご注意いただきたいのは、市販の「尿石症対応フード」は予防には使えるケースもありますが治療には使えません。また予防においても効力としては動物病院でオススメさせて頂いている療法食や維持食に比べると低いと言わざるをえません。対応フードを与えていても、注意深くオシッコの様子は観察するようにしてください。



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