院長ブログ

右眼窩下腫脹→歯肉からの炎症にて、抜歯したワンちゃんの例


先日に歯科処置を実施したワンちゃんの例です。

処置に先立つ1週間ほど前に、右目の下が急に腫れてしまったという事で来院されました。

特に外傷などはなく、また反対側の腫れは無い為にアレルギー性の症状でもありません。

シニアな年齢のワンちゃんの為、もしかしたらかなとお口の中を観察してみると案の定、腫れてしまった右目の下近くの歯に歯石の付着と重度な歯肉炎が認められました。

歯肉炎~根尖部からの炎症による腫脹でした。先だって注射と内服で症状を緩和させた後に、麻酔下で処置を実施する事になりました。

飼い主様は以前から口臭の存在には気づかれてましたが、ワンちゃんも特に口臭以外の症状はなく食事も通常通りに食べれていたとの事でしたので様子を見られていたそうです。

今回の症状が出てきたしまった時も、食欲や食べ方はいつもと変わらなかったそうです。それはそれで凄い💦

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上下共に奥歯に歯石が多く付着している様子がお分かりいただけるかと思います。基本的には前歯よりも奥歯の方がその配置及び機能的な面で歯石が付着しやすくなってしまいます。

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幾つかの歯は歯茎のダメージの為に退縮し、写真の様に歯の下に隙間が生じてしまっていました。

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ダメージの大きい歯の部分は抜歯し、縫合した後に全体を磨いて終了となります。

不思議だったのは、歯の先端の多くが摩耗して少し平らになっている事でした。よく固いオモチャ(蹄や牛骨、ケージなど)を噛む子には見られる事が多いのですが、そういったものを与えた事は昔も今もなく、且つ昔にそんなに色々と噛んでいた事もなかったという飼い主様のお話でしたので、何故そうなったのか??

摩耗が深刻ですと歯の髄が露出して、その部分から感染を引き起こしてしまう事もあります。(歯が折れてしまった際にも同様の事が起こり得ます)今回のワンちゃんはその影響・可能性は低いと判断して、それらの抜歯は行いませんでした。(恐らく疑いのある歯を全部抜くと、ほぼ全てを抜くことに...💦)

何本か歯を抜きましたので、痛み止めを用いていたとしても2~3日間は食事を食べる際に影響があるかと思いましたが、後日お話を伺うと処置の翌日からは以前同様に食事を食べていたそうです。やはり、その点は凄かった💦



おかげさまで開院1周年を迎えました


2017年の3月7日に開院し、本日で開院一周年を迎える事が出来ました。

ひとえに、ご来院頂きました飼い主様と動物さん達のお陰です。

心より感謝申し上げます。

この1年の間に、今まで経験することのなかった出来事にも多く遭遇致しました。

当院がお力添えできなかった事も多々御座いました。

気持ちを新たに、今後も皆様と地域に貢献できるように精進して参ります。

引き続き、うぇる動物病院を宜しくお願い致します。

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乳腺腫瘍を摘出した2例


以前に、乳腺腫瘍を切除したももこちゃんのお話をさせて頂きました。

病理検査の結果、ももこちゃんに多数存在していた乳腺腫瘍は幸いな事に全て良性の結果でした。

今回の乳腺腫瘍の例は、残念ながら悪性という病理検査結果だったお話です。

乳腺腫瘍の悪性度の判断基準の一つに、腫瘍の大きさがあります。

1cm未満のしこり、1~3cm未満、3cm以上の3つに区分されています。

このうち3cm以上のものは悪性の疑いが高く、転移などの可能性も高いといわれます。

逆に1cm未満のものは良性の腫瘍である傾向がありますが、多発性であったり再発性であったりする場合には注意が必要です。

1~3cm未満はその間となりますので、良性の例も悪性の例もあります。

但し、大きさはあくまで基準の一つに過ぎず、大きさのみに頼って良性悪性を判断する事には危険性があります。

今回悪性という結果が出た乳腺腫瘍は、いずれも1~3cm未満の区分に入るものでした。

ちなみに以前に手術したももこちゃんの一番大きかった腫瘍は3cmありました。しかし、良性腫瘍でした。

1例目は8歳の猫ちゃんです。1歳前後で避妊手術をされている子でした。

脇の下の近くにしこりがあるとの事でご来院されました。

部分的に乳腺腫瘍が疑われた為、針吸引検査を行ったところ、悪性度のある細胞が認められていました(乳腺腫瘍かどうかの判断はつきませんでした)。

猫での乳腺腫瘍は、そのほとんどが悪性と言われています。手術前検査では転移像などは認められなかった為、外科的切除を第一に飼い主様とご相談させていただきました。

腫瘍がみつかった乳腺部分を含む片側全切除するのが治療としての理想ですが、術後管理の点と飼い主様とのご希望にて、腫瘍を含む領域乳腺切除を行う事になりました。

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一番目の乳頭の直下とその近く、丸で囲った部分にしこりがあります。

それらを含みつつ1番目の乳腺を切除する形で、黄色線のように摘出しました。

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切除した組織です。大きい方のしこりは直径で1.4cmほどでした。

病理検査では乳腺癌という結果だった為、今後は癌の再発・転移予防の為の治療と、定期検査が必要となります。

2例目は12歳のワンちゃんです。この子も避妊手術をしていましたが、手術を実施した年齢は2歳頃との事でした。

一番下の乳腺の近くにしこりがあるとの事でした。

ワンちゃんの乳腺腫瘍は、左右4~5乳腺部に発生する事が多い傾向です。

このワンちゃんも一番下の乳腺でしたので、その傾向に重なります。

大きさは1.4cmほどでした。針吸引検査では良性の乳腺腫瘍を疑う結果でしたが、悪性度の判断は針吸引検査では断定が出来ない為、腫瘍のある乳腺と繋がる一つ上の乳腺を含む領域乳腺切除を実施しました(この子はおっぱいが片側4つ)

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赤丸部分にしこりがあり、紫のラインで切除しました。

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丸部分にしこりがあります。付随するリンパ節も切除しています。

病理検査では乳腺癌で、リンパ節転移も認められました。

腫瘍細胞を叩くための抗がん剤投与や、増殖を抑制するための内服薬の投与などの治療方針をご相談させていただき実施していくことになります。こちらも転移・再発の兆候を調べるために定期的な検査が必要となります。

今回の乳腺腫瘍はどちらもあまり大きくないしこりでしたが、結果は良くないものでした。

年齢や健康状態により、必ずしも乳腺部のしこりに対して全て手術を行うのが最適ともなりませんが、小さくても悪性で短期間の内に数倍に巨大化する事もあります。

乳腺のしこりに気づいた際は様子を見ずにすぐに動物病院を受診するようにお願い致します。



急性心原性肺水腫になってしまった一例


加齢に伴って体力・筋力の低下といった日常的な衰えが見られてくるのは人も動物も同じです。

そしてまた様々な病気のリスクも上がってくるのも同様です。

ワンちゃんにおいては癌などの腫瘍性疾患や関節の疾患、そして心臓疾患が年齢と共に増加してきます。犬種によっては中年齢頃から心臓トラブルの兆候が出始める事がありますが、無症状のまま経過して、ある段階を機に症状が出現してくるという例も多く見られます。

心臓トラブルについて一番簡単な有無を調べる方法は、聴診です。

聴診によって心臓に雑音が聞こえた場合には、何らかの問題が存在している、という事になります。

但し、心臓の雑音の強弱≠症状の深刻度には必ずしもならない事があります。雑音がはっきりと聞こえても元気にしている子もいれば、雑音はさほど強くはないけども咳が出て運動を嫌がるという症状を示す子もいます。

ですので、雑音が聴取された場合は、日常の様子(症状)、レントゲン検査、心臓疾患血液マーカー、心電図、心臓エコーなどの検査を行って治療介入が必要な段階かどうかを見てから実施していく事が大切です。

心臓の治療は、悪くなってしまった心臓を治す治療ではなく、心臓の負担を緩和して長持ちさせる、という治療になります。ですので、投薬を開始してからは減薬はあっても中止という事はありません。

今回のワンちゃんは、以前より心臓の雑音の存在は確認されていた子です。ですが日常生活では心臓に関わるような明らかな症状は一切なく、元気に過ごしていました。定期検査のレントゲンにて、心臓肥大という画像上の変化が見られ始めましたので、投薬を何時から開始しようかと検討している数日間の間に、具合が一気に悪くなってしまったのです。

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上側の画像が、投薬を何時開始しようかと検討する事にした時のレントゲンです。

下側が具合が悪くなり、呼吸困難を起こして来院された時のレントゲンです。

心臓の周り(肺になります)に白いモヤがかかっています。

これは「肺水腫」といって、心臓で調節できなくなってしまった血液中の水分が肺の中に漏れ出してしまっている状態です。こうなってしまうと、お部屋の中にいながら溺れてしまっているような状態と同じになってしまいます。

心臓には4つの部屋があり、流れてくる血液を決まった一方向にのみ送り出します。しかし心臓が悪くなってくると、多くの場合、心臓の部屋を区切る逆流防止弁が問題を起こしてしまい、血液の一部が逆戻りしてしまいます。心臓は非常に頑張り屋な臓器の為、限界までは自分で何とかしようと頑張ります。しかしどこかで限界を迎えてしまうと、今回のような症状を起こしてしまいます。

このワンちゃんは今回のように悪化するまでは、一切の咳や運動を嫌がるといった症状はありませんでした。呼吸が早く荒くなったな、と飼い主様が思ってからあれよあれよと症状が進んでしまったのです。

飼い主様が早めに気づき来院して治療を実施したため、呼吸困難の症状と肺に溜まった水は数日内で改善しました。

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治療開始後1週間後のレントゲンです。肺の周囲にあったモヤが無くなっています。

今現在は心臓のお薬を服用しながら、投薬内容を調節をしているところです。

投薬以外にも運動管理や、食事の内容などもみていく必要が今後はあります。

心臓の雑音を聴診で指摘された事のある子や、中高齢で運動したり興奮したりした際に咳が出る子、動悸息切れのようなものが目につくようになった子などは、レントゲンなどの検査を行って状態を調べておくことが大切です。



帝王切開を実施した小型犬ちゃんの例


ワンちゃんを飼われているご家庭のほとんどは、ペットショップさんなどで子犬と出会ってお家に迎えたり、あるいは保護犬を引き取って家族に迎え入れたりが多いでしょう。

ご自宅で飼われているワンちゃんの子供が欲しいので産ませたいかなと思っているのですが、というお話を時々飼い主様からご相談されます。

当院は直接的には繁殖の斡旋などは行っておりませんが、交配時期や妊娠診断は実施しております。

子供を産ませるのは、それを止めた方が良い理由(遺伝的疾患を有している・経済的に不透明・母犬に疾患がある・高齢等)がない場合は当院からあえて繁殖を止めて頂くことは申しません。

しかし必ずお話させて頂くのが、生んだ子・生まれた子全てに責任を持って飼育(又は里親さん探し)してあげてください、ということです。

犬も猫も基本は多産ですので、1頭だけというケースの方が少ないです。

1~2頭の場合もあれば、4~5頭という場合もあります。何頭生まれるかは神様のみぞ知るというところです。1頭だけ欲しかったのに、というような人間側の都合での繁殖は絶対に行ってはいけません。

また、ただ交配させて後は生まれてくるのを待つだけ、というものでも当然ありません。交配時期の見定め、妊娠中の生活・食事管理、妊娠中の母犬のケアや出産が近づけばそれに伴う準備や知識も必要になります。勿論、交配前にはワクチンなどの予防接種や明らかな遺伝性の疾患がないかなどを調べるのも、次世代の子に大切な事です。

赤ちゃんを授かるのは、人も動物も大変な事です。それゆえに素晴らしいというのもあります。

今回は小型犬の子で、事前にご相談をさせて頂いておりましたが、出産予定日に差し掛かっても兆候がなかなか見られず、いざ分娩兆候が来ても分娩には至らず途中で陣痛も弱くなってしまったということで緊急に来院していただきました。

事前に妊娠検査では2頭の子犬がおり、自然分娩可能な大きさでしたのでご自宅での出産の予定でしたが、来院時に改めてレントゲンを撮らせて頂くと

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子犬が全く産道の方に降りてきている様子がありません。

超音波検査で子犬の心拍を調べると、1頭の心拍数が低下している所見があったため、すぐに帝王切開を実施することになりました。

母犬の子は元気な状態だったのは幸いな点でした。

飼い主様のご協力もいただき、帝王切開にて取り出した2頭の子犬ちゃんは無事に生まれ、術後のお母さんのおっぱいを一生懸命に飲もうとしておりました。心拍の下がっていた子も当初はぐったりとしていて心配でしたが、その後徐々に活力が出て来て安心しました。

今回は飼い主様と事前にご相談しながらさせていただき、飼い主様もワンちゃんの出産に対するご経験のある方でしたので当日は子犬ちゃんの世話をお手伝いして頂きました。診察時間内であった事と当院の人員確保が可能であった為(それでも飼い主様にお手伝いをお願いさせてもらいましたが)に緊急的な帝王切開に対応できましたが、時間帯や人員の都合ではご対応できない場合もございます。あらかじめ連絡にて、「こういう状況である」というのを逐次連絡して頂きましたので、当院としても事前に準備を進めておくことができました。

今回のワンちゃんは自然分娩の方法を選択しましたが、犬種や胎子の大きさなどから、当初から帝王切開を選択する場合もあります。

どの方法が最適解かの判断は難しい点もありますが、いずれにせよご相談下さい。

今回生まれた子達が、元気に成長してくれることを願うばかりです。

(子犬ちゃんたちのお写真はバタバタしてて院長撮り忘れの大失態💦)



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