院長ブログ

【ケースリポート】歯周病のワンちゃんの処置例・ダックスフンドに多いケース


ケースリポートにおける歯周病関連は久々になるでしょうか。

今回のケースはミドルシニア年齢のダックスちゃんです。

過去の歯周病でのケースリポートをご覧頂くとおわかりになるかもしれませんが、シニア年齢でのダックスフンドの歯周病での処置は非常に多いです。犬種的な特性...なのかはわかりませんが、上の奥歯(唇に隠れて普段は見えない部分)の歯周病が非常に重症化しやすく、目の下が腫れてきた、片側だけで物を噛む、食べてる時に痛そうな様子が見られた、という症状が見られてきたら危険信号。そこから更には、くしゃみが多くなった、粘稠性の鼻水が出るようになった、くしゃみの時に鼻血が出る時がある、となってしまった場合には既にOUTでしょう😿

今回のケースのワンちゃんは他の疾患での治療経過があった為に、症状の出現が見られた後にすぐには処置せずに治療介入をしながら経過を見ていきましたが、いよいよ処置に踏み切らないとという事で飼い主様ごご相談させて頂き、実施致しました。

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症状としては目の下の腫れ、くしゃみ・鼻水が見られていたために投薬を実施していました。お薬で幾分の改善は見られていましたが、根本的解決の為に、大半の歯の抜歯を前提としてご説明させて頂き、処置を行いました。レントゲンでは赤丸で囲った領域の歯の埋まっている歯槽骨という部分に隙間が空いてしまっています(=骨が溶けて、歯を支えられなくなってきている)。

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歯の実際の様子です。歯石の付着は年齢を考慮するとある程度は仕方がないと思いますが、傾向的にダックスフンドは歯の奥の部分にダメージが行きやすい印象があります。これらの歯石を除去し、レントゲン検査と実際の処置時の目視と合わせまして、残存が厳しい或いは望ましくない歯に関しては抜歯を行いました。

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処置後の歯の様子です。抜歯を行った部分は歯肉や頬の粘膜を用いての穴を塞ぐ処置をしています(糸が見えると思います)。

この写真で見られている残存歯の中で、実際は抜歯処置を行いたかったけども諸所の状況から見送らざるを得なかった歯というのもあります。該当歯に関しては、今後の治療経過の中で判断していく予定です。

日々のデンタルケアも勿論可能であれば頑張って実施していただきたいですが、定期的なお口のチェックを行って、必要な場合には早期の処置介入をご相談・検討していただく事も、改善への近道となることもあります。

口臭や口を気にする様子、涎などの口に関わる気になる症状が見られた場合にはお早目の受診をオススメします。



ほっと一安心...😹緊急帝王切開の猫ちゃんのケース


先日、妊娠している猫ちゃんの緊急帝王切開を行いました。

妊娠の発覚から経過を診させていただいていた子ですが、出産予定日はちょうどお盆の真っただ中。4頭の赤ちゃんがいる事が判明しました。飼い主様には今年のお盆の外出は諦めてくださいとお話をしました。

飼い主様には妊娠時の留意事項や観察ポイント、出産環境の整備などなどをお話し、また、飼い主様ご自身も事前に知識を入れておいていただくようにYoutubeやネット、本などで出産に関するお勉強をしていただきました。

お盆期間中の大体この辺りだろうなぁ...という予想通りに出産日を迎えました。

しかし...大問題発生💦

飼い主様のご家族様からご連絡をいただいたのですが、「第1仔が生まれてから2頭目が生まれてこない。6時間経過している。」

.........!!!???

6時間?!通常は多産の場合には次の子は2時間以内に産まれてくるもので、そうでない場合は難産となり治療対応の必要が出てきます。どうやらご家庭内での連絡トラブルがあったようで、病院への連絡が遅れに遅れてしまったようです。

しかし6時間経過しているとなると、残った3頭はかなり厳しいかもな...と電話対応時は思いました。しかし可能性に賭け、とりあえず即時に来院を指示しました。

到着次第、すぐに超音波検査。母体は問題はなさそうで何よりですが、お腹の中の子がどうかはわかりません。超音波では残った3頭の内2頭の心拍は視認できましたが、弱くなっていました。残りの1頭は心臓の位置をぱっと見の検査では確認できず、生死不明でした。

ともかく、今生きている子を何とかしないと!という事で、待機させていたスタッフと共に緊急帝王切開を行いました。

結果...

先に産まれていた1頭目を含めて、全頭共に無事に産まれました!良かった!

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帝王切開で取り上げた3頭の内の1頭はなかなか呼吸が戻らずに正直諦めるところでしたが、看護士の粘りで最終的には自発呼吸をするようになりました。

母猫も麻酔から醒めて暫く後には、子猫たちにおっぱいをしっかり飲ませており、この点もほっとしました。

猫の出産は、犬と比較すると難産のケースは少ないですが、それでも今回のように難産となる時はあります。

大事なのは、事前に病院と相談して置く事と、飼い主様も知識を持っていただく事、そして産前産後含めて様子をしっかりと見ておくことです。この子たちがこのまま元気に成長してくれる事を願うばかりです😊

(※当院では、かかりつけ患者様及び経過を診させてもらっている子以外の帝王切開は受け付けておりません。また人員都合上、夜間早朝のご対応も困難です。出産を今後ご検討の場合は、必ずかかりつけ病院様とよくよく相談しておくようにしてください。)



肺水腫(何れも数日以内の急激な悪化)のケースリポート


過去にも「肺水腫」のお話はさせて頂いた事があるかと思います。

一般的には...というよりかは、当院では主にという表現をさせて頂きますが、ワンちゃん(特に小型犬種)に多くみられる僧帽弁閉鎖不全症という弁膜症の悪化によって、心臓からの血液循環に支障きたし、その結果、本来は空気を取り込んで赤血球に酸素を渡す役目を果たすべき肺の中に空気ではなく水分が入り込んでしまい、酸素が体内にうまく取り込めなくなってしまう状態です。いわば、陸地にいながら"溺れた"状態となってしまうのが肺水腫です。

弁膜症以外の原因でも肺水腫は生じます。代表例では、猫ちゃんでは心筋症という疾患であったり、心臓に関連しない場合では電気コードを齧って感電してしまった後に生じるケースもあります(※厳密には感電の場合は前者達とは異なりますが)。

何れの原因にせよ、肺水腫という状態に陥ってしまった場合には緊急を要する状態であり、治療介入を行っても亡くなってしまう可能性もある、非常に危険な状態となってしまいます。

今回のケースリポートは、2024年に入り当院で治療をさせて頂いた、肺水腫を患ってしまったケースです。

4例の内3例は、『今までに心臓の治療を既に行っていて安定していたが、ここ3日以内で急激に悪化した』というケースです。

元々の心臓疾患の診断は以前にさせて頂いており、その病態の程度によって心臓の負担を軽減するお薬を単独あるいは複数を組み合わせて処方させて頂いておりました。しかし、ここ3日以内に元気食欲の低下と呼吸が荒くなってきて寝ていないという主訴にてご来院されています。

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1例目の子の 左:発症前のX線 右:発症時のX線 です。

赤丸で囲った部分の肺が、発症前と比べると白っぽくなっていることがおわかりになりますでしょうか。

簡単に言うとこの白くなった部分に水が溜まってしまっているという状況になります。

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2例目の子の 左:発症前(発症時の7日前)のX線  右:発症時のX線 です。

1例目の子に比べると、肺の白さが非常にわかりやすいかと思われます。1週間前に経過のX線を撮影した際は何ら症状が見られませんでしたが、この数日後から異変が見られました。

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3例目の子のX線画像です。この子は当院での治療履歴が無く、他院様にてお薬を処方して頂いていたようですが、かかりつけ様が休診日の為に緊急で来院されました。やはり、赤丸の部分の肺が白くなっています。

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今までの3例はワンちゃんでしたが、4例目は猫ちゃんになります。

3例のワンちゃんは何れも僧帽弁閉鎖不全症からの肺水腫が主体となっていました。

4例目の猫ちゃんは、心筋症という病気からの肺水腫となります。今までは特に無症状で体調に気になる点はなかったようで、来院履歴は無い子でしたが、数日前から呼吸回数が多い気がするとの事で来院されました。各種検査の結果、心筋症と診断し、治療が奏功して赤丸の状態→青丸の状態へと改善してくれました。

4例のうち、残念ながら1例の子は翌日に亡くなってしまいました。3例の子は現在も投薬により、治療・経過観察中です。

今回のケースにて、飼い主様からのご質問の共通事項が『急に悪くなってしまうものなのですか?』というものでした。

確かに投薬にて安定していたものが、数日の内に悪化して緊急事態に陥ってしまったとすればそのご質問をいただく事もわかります。

『はい。なる時はなってしまいます。ですので、普段の様子の観察と、変だなと思ったらすぐに受診をしてください』というお答えしかできないというものです。

心臓疾患の治療中あるいは心臓について注意してくださいねとご指摘を受けたことのある方は、以下の事をよく覚えておいてください。実際にこれを覚えて頂いていた飼い主様が異変に早々に気づいて、重症化する前に手を打てたというケースがありました。

≪安静時呼吸(落ち着いて休んでいる時の呼吸・胸の動き)の回数が1分間に40回以上の時は、呼吸が苦しい可能性あり≫



🐰⇒🐲 2023年、1年間大変お世話になりました 🐇⇒🐉


本日にて、年内の診察を終了とさせていただきます。

12月31日(日)~1月3日(水)までの期間は、休診とさせて頂きます。

年明けの診療は1月4日(木)からとなります。

1月の臨時休診日は、1月20日(土)全休となります。

2023年は、それまでの新型コロナからの様々な制約が解除された年でした。病気そのものが無くなったわけではありませんし、今時分はインフルエンザが猛威を振るっていますので引き続き感染症対策は継続していかなければいけませんね😷

本年も皆様には大変お世話になりましたこと、厚く御礼申し上げます🙇

引き続き2024年もどうぞ宜しくお願い致します。

どうぞ良いお年を皆様、お迎えくださいませ🐶🐱

IMG20231228173318.jpg(※今年から、干支の着ぐるみ人形さんが無くなってしまいました😿)



健康診断で異常が発見された一例その2(ワンちゃんの脾臓腫瘤)


前回に続いて、今年の秋の健診時に見つかった異常でのケースリポートその2です。

今回のケースはワンちゃんです。毎年、健診を実施させて頂いている子です。

今年も例年と同様の健診コースでご依頼いただき、実施致しました。特に日常生活での大きく気になる点や変化兆候などはありませんでした。

いざ健診、各種検査を実施させて頂くと明らかに気になる点&前年の検査所見と異なるところが見つかりました。

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レントゲン検査では、赤丸の部分に前年は見られなかった陰影が認められています。続けて実施した超音波検査では、脾臓という臓器に明らかに腫瘤が存在している所見が見られました。

超音波の画像所見からの推測として、脾臓の結節性過形成あるいは血腫という良性の腫瘤性病変を疑いました。

中高齢のワンちゃんには時折見つかることがあるもので、悪性腫瘍ではなく良性の病変です。どちらも転移などすることはありませんが、大きくなってきて周りの臓器を圧迫したり、良性であっても最悪は破裂したりする事もあるので注意が必要です。

飼い主様とのご相談で、何れ大きくなることで問題が生じてしまうかもしれない可能性があるのならば、今回の健診でこの異常所見以外には大きな問題点は見られなかった事から、麻酔による外科的介入の実施は可能と判断されますので、早期の外科介入を行って予防策を講じましょうという結論になりました。

後日、全身麻酔を行い、腫瘤を含めた脾臓の摘出手術を行いました。ちなみに脾臓という臓器は、極論を言ってしまえば、切除して失ってしまっても日常生活は通常に送ることができる臓器です。血液の貯蔵、免疫系の調整などの臓器としての役割は当然に持っていますが、他の臓器でも代替やサポートが可能である為、前述のような言い方もできてしまいます。あるに越した事はありませんが。

さて、手術時においてですが、一つトラブルが発生してしまいました。実際に手術を行うと、事前の予想通りに良性の病変であろうなという外観をしておりました。順調に脾臓摘出の段取りは進んでいたのですが、その途中で腫瘤の一部が自重により一部が裂け始めてしまったのです。幸いにして、腫瘤側の方から血管を止めて進んでいたので、大出血することはなく、少しドキっともしましたが結果的にはその後の問題はなく手術を終える事が出来ました。

さて、この時点で「この程度で損傷してしまう程に脆弱な腫瘤は果たして良性の病変なのだろうか...?」と嫌な想像をしてしまいました。脾臓に発生する腫瘍(※腫瘤、という表現ではなく)は、悪性の挙動を示すものが非常に多く、難敵揃いです。超音波検査&手術時の外観から良性病変と考えていたので、このイベントがあった時からもしかするとという想像が出てきてしまいました💦

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摘出した脾臓&腫瘤になります。赤丸が腫瘤ですが、本来は右側のみで、左側は裂けて開いてしまったところとなります。

手術翌日には退院し、病理検査の結果をハラハラしながら待っていましたが...

良性の結節性過形成でした!良かった!

脾臓の良性腫瘤は時々遭遇する事のある病変で、即座に外科介入をしなければならないというものでないケースも沢山あります。

今回の件も当初はそのように思っていましたが、結果として脆弱性があったことから様子を見ていた場合にはもしかすると腫瘤が破裂して大出血を起こしていた可能性も非常に高かったと思われます。早期の手術介入を決断、同意していただいた飼い主様の判断が冴えわたったケースだと思います。

仮に脾臓に腫瘤、良性のそれが見られた場合には、必ず今後の事も踏まえてご相談させて頂きたいと思いますので受診・経過観察を宜しくお願い致します。



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