🦷見た目だけではわからない歯周病🦷
今回の記事も歯にまつわるものです。
何度もブログには歯の処置については載せさせてもらっていますが、今回の例は少し特殊かと思いましたので書かせて頂いております。
シニア年齢のワンちゃんですが、この子は他院様でほぼ1年に1回は麻酔をかけての歯石処置をしてもらっていたという事です。
お家でのデンタルケアはなかなかできない(させてくれない😢)との事でしたが、とはいえ年1回ペースで予防的歯科処置をされていらっしゃったのだから素晴らしいものです。
しかし秋の健診キャンペーンをご利用いただいた際に、当院から歯周病と口臭についての問題点をご指摘させて頂きました。
飼い主様も口臭に関しては気になっている点だったとの事ですが、年1での歯のお掃除をしてもらっていましたので何故なんだろうと疑問に感じていらっしゃいました。
後日、当院にて歯の掃除&口臭について調べる為に麻酔下にて処置を行いました。
上の写真は、処置に入る前の左側の歯の写真です。犬歯などに歯石の付着は見られますが、歯のほとんどは大して歯石が付着していないのがお分かりいただけると思います。歯茎についても、外見上は赤く腫れあがってしまったりはしていません。
しかし、X線を撮影してみると...
左上顎
左下顎&右下顎
X線は、奥側が最初の写真と同じ、左側のアゴとなっています。
つまり、歯茎に隠れて見えない歯の根元部分に関しては、かなりのダメージが蓄積していたという事になります。
こちらは右側の歯の写真になります。左同様に全体としては歯石の付着や歯茎に腫れなどが目立っていません。1か所の歯の根元については、外見上からもダメージが深刻な様子が窺えます。
右上顎
右下顎
結果として、上下の奥歯(臼歯)をかなりの本数を抜歯せざるを得ない状態でした。飼い主様としてもまさかこうなっているとは予想だにせず、処置前にそれなりの歯の数を抜歯しないといけないと思うというアナウンスはさせてもらっていましたが、その予想を上回ってしまう状態でした。
デンタルケアがなかなかできず、且つシニア年齢で、歯石処置を特にしたことが無いという経緯があったのであれば、かなりの本数を抜歯せざるをえないという状態の子に遭遇するケースが度々あります。
しかし今回の子は事前情報のように、年1でお掃除をしてもらっていたにもかかわらずこのような状態になってしまっていました。恐らくは、口腔内の細菌叢がかなり悪いタイプに属するものが多い環境下の為、歯周病になってしまいやすい体質という点が主原因かと思われます。人間でいう「虫歯になり易い人」というタイプに似ているというのが考えやすいかもしれません。残念ではありますが、今回抜歯しなかった歯に関しても数年以内には抜歯せざるを得なくなってしまうという予想をしております。少しでもその可能性やダメージを抑えるために、口腔内環境の改善を図る為のアプローチを実施しています。
歯茎で覆われていて見えない部分での病気に進行、気づきにくい為に厄介です。こういった歯の異常は、歯科専用のレントゲン装置を用いての検査・診断が最も有効です。当院には歯科専用のものはないため通常のレントゲンを用いての検査となりますが、口を大きく開けての撮影が必要な為に鎮静などの処置が必要となります。
以前の歯関連の記事でも記載させて頂いたことがありますが、無麻酔での歯石除去は目に見える表面的な所の歯石のみを除去し、歯周ポケット内の歯石除去・清掃がされていないケースが多々あるようです。そういった場合は、今回の例と似たように外見上キレイでも歯の中はダメージが、という例も当院では実際にありました。
毎日のデンタルケアが何よりも重要な事には変わりありませんが、定期的な歯のチェック・診察は中高齢の子は勿論のこと、2~3歳以降の子も行っていく事が推奨されます。そして、歯石が付着してお口の中にトラブル発生の際には必ず動物病院を受診してくださいね。