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泌尿器系の病気 ー 尿石症~シュウ酸カルシウム結石の例~


泌尿器疾患の中で一番多く遭遇する病気は膀胱炎です。

膀胱炎に次いで多いのが尿石症です。

尿石症は尿路(腎臓~尿管~膀胱~尿道)のどこかで石ができてしまい、それに伴って排尿痛や血尿、排尿困難などの症状を呈するものの総称です。

尿石には幾つか種類がありまして、ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石という種類が最も多くみられます。かつては尿石症というとほとんどがストルバイト結石が占めていましたが、昨今ではシュウ酸カルシウム結石が増えてきました。今では約半々というぐらいにまで変化しています。

ストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石には尿路にできる石という点は同じですが、性質は全く異なります。

ストルバイト結石に関しては、正式名称はリン酸アンモニウムマグネシウム結石と言います。名前にミネラル成分としてマグネシウムMgが入っています。この石はオシッコがアルカリ性になると形成され易くなります。ですので膀胱炎など細菌が感染している状況では尿がアルカリになりますので石ができやすく、お肉ばかり多く食べていると同様に尿はアルカリ性になってしまうので石ができてしまいます。

この結石は尿が酸性で維持されていると形成されにくいという点と、"溶ける"という性質があります。

溶けるといってもお水に砂糖を溶かすような感じではなく、徐々に石の形が崩れて小さくなってきて...という具合です。ですので、ストルバイト尿石症の場合には内科的に石を溶かす治療を行うことが第一となります。あまりにも大きい石や混合タイプの石、症状が強くでている場合には内科治療よりも外科治療を先に行う場合もあります。

もう一つのシュウ酸カルシウム結石は、名前にカルシウムが入っていますので、カルシウム分を多く与えていると出来やすくなります。

こちらの方はオシッコの酸性アルカリ性には左右されません。昔はアルカリ側で形成され易いといわれておりましたが、研究が進むにつれてpH(ペーハー)は特に関与しないことがわかりました。

血液の中のカルシウム成分が多いと石ができやすくなってしまいすが、かといってカルシウムを摂らないでいると骨が脆くなり、骨だけでなくカルシウムは体の中で大切な役割を果たす成分になりますので、必要以下には減らすことはできません。しかしその必要分しか摂取していなくても石ができてしまうという場合の多くは体質が関係しています。体質というのか個体差というのか難しいですが。

"体質""食事内容"

この二つが尿石症の原因となりやすい要因です。

体質に関してはなかなか対策が難しいものがあります。

しかし食事に関しては、過去のオシッコトラブルの有無や動物の種類などから、尿石が出来やすいのかそうでないのかを把握する事が可能です。

尿石症になってしまう前に、今一度食事内容を振り返ってみてはいかがでしょうか。

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膀胱と尿道にシュウ酸カルシウム結石が複数できてしまったワンちゃんのレントゲンです。

トゲトゲした石が膀胱内に、枝豆のような石がおちんちんのところに数珠つなぎで詰まっています。

この子はオシッコは石の隙間から出ることができていましたが、完全に石で詰まってしまうとオシッコもできないので緊急手術が必要になります。

石の成分が判明しなかった為、最初は内科療法を選択しましたが改善は全くなく、シュウ酸カルシウム結石の可能性が高いと判断し、手術にて膀胱と尿道を切開して摘出しました。

KIMG0056.JPG

摘出した結石です。左のが膀胱内、右のは尿道内のものと膀胱内結石が砕けた破片です。

シュウ酸カルシウム結石は膀胱内に形成されてしまうと外科的対応しか手段がありません。

画像の通りにトゲトゲした結石がシュウ酸カルシウムは作られる傾向にあるので、血尿や排尿痛がひどくなる場合があります。

事前の食事管理で症状の軽減もしくは発症そのものを防げるかもしれません。

食事について気になる点があれば、どうぞご相談下さい。



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ちょっとしたお話 ~注射前のアル綿消毒~


注射をする前にその部分をアルコール綿(以下アル綿)で拭いて消毒してからチクッ。

ほぼ全ての人が経験している事ではないかと思います。

自分がお医者さんにかかり、ワクチンや点滴など注射をしてもらう時はこのアル綿で拭き拭きというのを看護師さんにしてもらっています。

このアル綿での注射部位の消毒・・・実は効果がほとんどないというのをご存知でしょうか?

動物病院においては、という一文を一応加えさせて頂きますね。でも人の医療現場においても同様の事は言われています。

動物も人も、皮膚・毛にはたくさんの常在菌とよばれる細菌が沢山います。

注射をする時には当然針を使いますので、針穴ができます。

この針穴から細菌が入り込んで感染・化膿を防ぐためにアル綿消毒している、というのがその理由と考えられていました。

ですが、これには医学的根拠が乏しかったのです。

アルコール消毒の原理は、適切なアルコール濃度を用いるとタンパク質を変性させる作用により細菌の活動力を奪ったり、細菌の防護壁となる細胞壁を破壊して倒す、水分を奪うことで変性作用を強化する、などがあります。

薄すぎるアルコールは消毒効果がありませんし、濃すぎるものは消毒効果は上がりますが生体に使う場合は正常な細胞にもダメージを与えてしまいますので、大体70~80%の濃度が適切と言われております。

(※関係ありそうでなさそうな話ですが、昔見た映画などでお酒を口に含んで傷口にブシャァ!!としてから、銃弾を取り出したりするシーンを見たことがありますが、「口に含んだ時点で消毒の意味はないのでは...」と思いつつ、「そのお酒では消毒できないのでは...沁みるだけでは...」などと、演出に無言でツッコミを入れてたりしました)

そしてアル綿消毒に戻りますが、アルコール度数が上記以上のものに浸漬させたものが当院もありますが、数回拭いた程度では注射部位の細菌をやっつけることはできません。

全然やっつけられないという事ではないですが、針穴から入る恐れのある細菌を全てやっつけておこうという趣旨には及ばないレベルです。

では何のためにやっているのでしょうか?

『何とな~く』

表現が雑すぎて怒られてしまいますね(;^_^

注射を打つ時にはアル綿消毒をする、というのは多くの方がそういうものなのだと認識されていると思います。ですが、実際にはその効果は懐疑的又は否定的とされています。

では意味がないのならその行為を省略してしまっても問題はありません。

ですが、お医者さんでアル綿消毒される前にいきなり注射を打たれたら「え?!」と思ってしまいますよね。「あの先生、消毒しないで注射してる・・・うわぁ・・・」と思ってしまったりすることもあるのではないでしょうか。

ですから、今現在もお医者さん(人も獣医も)はアル綿消毒というものを行っているのです。消毒目的というより、注射を打ちますよーという儀式的な意味合いの方が強いかもしれません。

ただ、有効な場合も当然ながらあります。

それは注射部位がひどく汚れていて汚染されたりしている際は、綺麗にした上で注射をうった方がよろしいでしょう。泥・土が多いと、やはりそのまま打つのには懸念がありますので、消毒兼清拭してから注射させて頂いております。

また、採血の際には血管を浮き上がらせてわかりやすくする為にアル綿で拭いたり、動物病院ですとスプレーしたりしています。

アル綿消毒をするから良し悪し

アル綿消毒をしないから良し悪し

どちらがどっちということではなく、必要に応じて使い分けている方が大半ではないかなと思いますが、当院はワクチン接種などの時にアル綿消毒を基本は行わないで注射を打つことが多いですので、驚かないで頂ければなと思います。



皮膚のできもの ー 毛包上皮腫の例


今回は先日に皮膚のできものを主訴に来院したワンちゃんのお話です。

2ヶ月ほど前に胸の皮膚に数mmのしこりがあるとの事でした。

様子を見ていると少しずつ大きくなってきたましたので、診察した上でご相談となりました。

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ワンちゃんは9歳の男の子です。毛を刈った後ですのでわかりやすいですが、中央部分に白い楕円状のしこりがあります。

「イボ」であったり「しこり」であったり「腫瘤」であったりと、表現は様々ですが中高齢のワンちゃんには皮膚のできものというのが少なからず見られるケースが加齢によって増えてきます。また犬種によってその出来やすさというものも違ってきます。

外見上でそのできものが良いもの・悪いものという評価は一概にできません。また、それが腫瘍性なのか非腫瘍性なのかというものまた然りです。

皮膚にしこりを見つけた場合、大きさにもよりますが一般的には針生検という検査を行います。

しこりに針を刺して、そのしこりを構成している細胞成分の一部を採取して標本にし、顕微鏡で確認するという検査です。

検査の利点はその簡便さです。通常は鎮静や局所麻酔などは用いず実施が可能です。欠点は、しこりのピンポイントでの細胞採取によりますので診断率が100%ではないという事です。

この検査を実施することでおおよその診断、方針を定めて治療(外科なのか内科なのか様子見なのか等々)していくという流れが多いです。

今回のワンちゃんのケースでは、診察して状態・状況を見ると、表皮内嚢胞というものが最も疑われました。

表皮内嚢胞とは、毛穴の部分(毛包)に袋状の構造物ができてしまい、そこに皮脂や角化物などが蓄積して膨らんできてしまうものです。内容物が満たされてくると周囲を圧迫するため触ると痛がったり、そのままにしておくと袋が破裂してしまう事もあります。

腫瘍性の病変ではありませんので、対症的に膨らんできた部分に切開を入れて内容物を排出させたり、袋状構造物を引き剥がしたりして治療する例があります。しかし上記方法ですと再発する可能性もあるので、根治としてはその袋含めて周囲丸々切除します。

しかし、外観はそのように見えても腫瘍性病変が存在している可能性も勿論あります。

「可能性としては表皮内嚢胞が一番疑わしく、切開排出の対症療法での対応も可能ですが再発する可能性があります。また、表皮内嚢胞でない場合も考えられ、その場合は針生検をするか、検査を兼ねてしこりそのものを切除してしまうか(表皮内嚢胞であれば根治的)という選択があります」とご提案させて頂き、検査及び根治目的として切除する事になりました。

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しこりそのものは8mmくらいで、マージンを取った上で約12mm程で切除しました。

病理検査に提出すると、結果は毛包上皮腫という良性の皮膚腫瘍でした。悪性の所見もなかったとのことで安心です。

毛包上皮腫という腫瘍も中高齢以降に多く見られるものですが、対症治療ですと再発を繰り返すケースがあるため、今回の切除選択は根治目的に合致していたということになります。

今回は単発の発生でしたが、多発的に各所に出来てしまう例もあります。その全てを切除すべきかどうかは状況によりますが、体を触っていて何かしらのしこりに気づき、そのしこりが大きくなってきたり色が変わってきたりと言うことがあれば、早めに調べておきましょう。



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