重症熱性血小板減少症候群のネコからの感染事例のニュース
衝撃的なニュースが報道されていましたね。
ご存知の方もいらっしゃるかと思われますが
「NHKニュース マダニウイルス 動物から初の感染例か 50代女性死亡(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170724/k10011072191000.html)」
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスによって引き起こされる伝染病によって亡くなられた方がいらしゃったというニュースです。
このSFTSウイルスは、マダニが保有・媒介をし、マダニが吸血する事により伝染します。
SFTSという病気は2011年に中国で原因ウイルスが判明し、命名されました。それにより、過去に遡って原因不明の病気で亡くなった方の血液を調べてみるとこのウイルスが検出され、死因がこのウイルスによると見られる例が数多くあることがわかりました。
日本においても同様に調査してみると、やはりこの伝染病が原因と考えられる死亡報告が多数あったのです。中国で発見されたウイルスと日本で検出されたウイルスは遺伝子分類上全く同じものではなく、日本には日本のSFTSウイルスがいるという事もわかりました。つまり、つい最近になって国外から入り込んだ伝染病ではない、という事です。
現在は西日本方面での感染症例報告のみで、東日本ではこのSFTSの感染報告は今のところありません。
しかし、マダニは全国のどこにでも存在し、そしてこのウイルスはいつから日本に存在していたのか今のところはわかっておりません。非常に身近な脅威となっているのは事実です。最近話題のヒアリよりも、こちらの方がはるかに恐ろしい存在です。
マダニは屋外に居る、吸血性のダニです。布団や畳、食品などにいるダニとは全く異なります。
フタトゲチマダニ
(画像は国立感染症研究所ホームページより)
何れの画像も拡大、または"吸血"した後のマダニの画像です。
マダニは吸血すると、最大でその体積は100倍にもなります。この段階であれば、発見は容易になるでしょう。「イボかな?」と思うと足が動いてたとか...という話を飼い主様からよく伺います。
しかし、吸血する前のマダニは小さく、発見は容易ではありません。特に動物達の毛に隠れてしまうと吸血前のダニの発見は困難です。
(バイエル・ペットの為のヘルスライブラリより。http://www.bayer-pet.jp/pet/library/parasite/madani/madani03.html)
マダニは草むらに潜み、草の先端付近で吸血する獲物が通りかかるのを待ちます。
そして獲物が通った時に「エィ!」という感じに乗り移ってきます。それから主に皮膚が薄く刺しやすそうな部分を狙って吸血を始めます。
ですので野山はもちろんの事、草むら生い茂る場所などに入る時は長袖長ズボンを着用し、なるべく素肌の露出を控えて、虫よけスプレーなどを用いるのが人の方ではマダニの予防対策になります。
しかし人間だけ対策をしていても防げない場合もありえます。
犬猫を飼っている場合、散歩で外出し、草むらに突っ込んで遊んだりおトイレしたり...そんなシーンも多々あるかと思います。その時に運悪くマダニがその場所にいたとしたら...動物にくっついて家の中に侵入というケースもあります。
SFTSの症状は人では
・潜伏期間は6日~14日。
・食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛等の消化器症状が多くの症例で認められる。
・その他頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などを起こす。
・重篤化すると死亡する。その致死率は6.3〜30%と報告されている。
・高齢者や免疫力の弱い人では重篤化しやすい (国立感染研より引用)
とあります。この症状がSFTSに特徴的な症状だ!というものがない為、診断も困難です。
犬猫ではどうなのでしょうか。
いまだ事例がほとんどない為、はっきりとしたものではないことを前置きしたうえで
「発熱・衰弱、血小板減少症が見られた飼育猫及び飼育犬の血液・糞便からSFTSが検出された」と厚生労働省より通達が来ております。
何となくうちの子が元気がなくてぐったりしていて、動物病院で血液検査してもらったら白血球と血小板が少なくなっていた...って、これはもしかしてSFTS!?
可能性は0ではありませんが、同様の症状を引き起こす病気は多々ありますので不安になり過ぎないようにしてください。
マダニ⇒人、マダニ⇒犬・猫という感染経路は今までも判明していましたが、今回は猫⇒人という例が確認された事が大きなポイントです。
皆様にご注意いただきたい点は、不安になりすぎない事、慌てない事です。
SFTSの感染事例は少なく、ましてや屋内飼育の場合は感染の可能性は非常に少なくなります。
そして、野良猫の全てがSFTSを持っているわけでは勿論なく、元気がなく発熱している動物が皆SFTSという事でもありません。
落ち着いて状況を見る事と、そして万が一の事態を避けるためにしっかりと動物達にはノミ・マダニの予防薬を使うようにしましょう。
マダニの予防対策を人も動物も如何に行うかという事が、SFTSそのものの予防に繋がり、重要となります。
こちらのHPも是非ご覧になってみて下さい。
厚生労働省「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)に関するQ&A」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/sfts_qa.html