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町田リス園のレプトスピラ感染疑いについて、の続報


1/31に町田市リス園にて、定期尿検査においてレプトスピラ感染を疑う例が見つかり、リス園が休園、行政機関が確認を実施していた件につきましての続報となります。

2/21に町田市からのプレスリリースが発表されました。

https://www.city.machida.tokyo.jp/shisei/koho/faxrelease/2017/201802.files/180221_02.pdf

現状ではリス園で行った再検査では陰性、レプトスピラ感染を疑う症例は見られていないとの事から、病原性のある型の可能性は低いという事のようです。

リス園は2/23から再開しています。

拡大する傾向があれば非常に問題が大きくなるものでしたが、そういった状況にはならずに胸を撫でおろすところです。

しかし、レプトスピラ病という病気が無い、と断言はできませんので、引き続き注意をお願い致します。

特にアウトドアで水遊びなどを頻繁にする子や、お住まいの近くに川や水に関連する環境があったり、野生のネズミを見かけることが多いなどの場合は、ワンちゃんにおいてはワクチン接種は8種以上のものをおすすめいたします。



乳腺腫瘍を摘出した2例


以前に、乳腺腫瘍を切除したももこちゃんのお話をさせて頂きました。

病理検査の結果、ももこちゃんに多数存在していた乳腺腫瘍は幸いな事に全て良性の結果でした。

今回の乳腺腫瘍の例は、残念ながら悪性という病理検査結果だったお話です。

乳腺腫瘍の悪性度の判断基準の一つに、腫瘍の大きさがあります。

1cm未満のしこり、1~3cm未満、3cm以上の3つに区分されています。

このうち3cm以上のものは悪性の疑いが高く、転移などの可能性も高いといわれます。

逆に1cm未満のものは良性の腫瘍である傾向がありますが、多発性であったり再発性であったりする場合には注意が必要です。

1~3cm未満はその間となりますので、良性の例も悪性の例もあります。

但し、大きさはあくまで基準の一つに過ぎず、大きさのみに頼って良性悪性を判断する事には危険性があります。

今回悪性という結果が出た乳腺腫瘍は、いずれも1~3cm未満の区分に入るものでした。

ちなみに以前に手術したももこちゃんの一番大きかった腫瘍は3cmありました。しかし、良性腫瘍でした。

1例目は8歳の猫ちゃんです。1歳前後で避妊手術をされている子でした。

脇の下の近くにしこりがあるとの事でご来院されました。

部分的に乳腺腫瘍が疑われた為、針吸引検査を行ったところ、悪性度のある細胞が認められていました(乳腺腫瘍かどうかの判断はつきませんでした)。

猫での乳腺腫瘍は、そのほとんどが悪性と言われています。手術前検査では転移像などは認められなかった為、外科的切除を第一に飼い主様とご相談させていただきました。

腫瘍がみつかった乳腺部分を含む片側全切除するのが治療としての理想ですが、術後管理の点と飼い主様とのご希望にて、腫瘍を含む領域乳腺切除を行う事になりました。

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一番目の乳頭の直下とその近く、丸で囲った部分にしこりがあります。

それらを含みつつ1番目の乳腺を切除する形で、黄色線のように摘出しました。

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切除した組織です。大きい方のしこりは直径で1.4cmほどでした。

病理検査では乳腺癌という結果だった為、今後は癌の再発・転移予防の為の治療と、定期検査が必要となります。

2例目は12歳のワンちゃんです。この子も避妊手術をしていましたが、手術を実施した年齢は2歳頃との事でした。

一番下の乳腺の近くにしこりがあるとの事でした。

ワンちゃんの乳腺腫瘍は、左右4~5乳腺部に発生する事が多い傾向です。

このワンちゃんも一番下の乳腺でしたので、その傾向に重なります。

大きさは1.4cmほどでした。針吸引検査では良性の乳腺腫瘍を疑う結果でしたが、悪性度の判断は針吸引検査では断定が出来ない為、腫瘍のある乳腺と繋がる一つ上の乳腺を含む領域乳腺切除を実施しました(この子はおっぱいが片側4つ)

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赤丸部分にしこりがあり、紫のラインで切除しました。

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丸部分にしこりがあります。付随するリンパ節も切除しています。

病理検査では乳腺癌で、リンパ節転移も認められました。

腫瘍細胞を叩くための抗がん剤投与や、増殖を抑制するための内服薬の投与などの治療方針をご相談させていただき実施していくことになります。こちらも転移・再発の兆候を調べるために定期的な検査が必要となります。

今回の乳腺腫瘍はどちらもあまり大きくないしこりでしたが、結果は良くないものでした。

年齢や健康状態により、必ずしも乳腺部のしこりに対して全て手術を行うのが最適ともなりませんが、小さくても悪性で短期間の内に数倍に巨大化する事もあります。

乳腺のしこりに気づいた際は様子を見ずにすぐに動物病院を受診するようにお願い致します。



急性心原性肺水腫になってしまった一例


加齢に伴って体力・筋力の低下といった日常的な衰えが見られてくるのは人も動物も同じです。

そしてまた様々な病気のリスクも上がってくるのも同様です。

ワンちゃんにおいては癌などの腫瘍性疾患や関節の疾患、そして心臓疾患が年齢と共に増加してきます。犬種によっては中年齢頃から心臓トラブルの兆候が出始める事がありますが、無症状のまま経過して、ある段階を機に症状が出現してくるという例も多く見られます。

心臓トラブルについて一番簡単な有無を調べる方法は、聴診です。

聴診によって心臓に雑音が聞こえた場合には、何らかの問題が存在している、という事になります。

但し、心臓の雑音の強弱≠症状の深刻度には必ずしもならない事があります。雑音がはっきりと聞こえても元気にしている子もいれば、雑音はさほど強くはないけども咳が出て運動を嫌がるという症状を示す子もいます。

ですので、雑音が聴取された場合は、日常の様子(症状)、レントゲン検査、心臓疾患血液マーカー、心電図、心臓エコーなどの検査を行って治療介入が必要な段階かどうかを見てから実施していく事が大切です。

心臓の治療は、悪くなってしまった心臓を治す治療ではなく、心臓の負担を緩和して長持ちさせる、という治療になります。ですので、投薬を開始してからは減薬はあっても中止という事はありません。

今回のワンちゃんは、以前より心臓の雑音の存在は確認されていた子です。ですが日常生活では心臓に関わるような明らかな症状は一切なく、元気に過ごしていました。定期検査のレントゲンにて、心臓肥大という画像上の変化が見られ始めましたので、投薬を何時から開始しようかと検討している数日間の間に、具合が一気に悪くなってしまったのです。

胸部心肥大ラテ.png

肺水腫ラテ.png

上側の画像が、投薬を何時開始しようかと検討する事にした時のレントゲンです。

下側が具合が悪くなり、呼吸困難を起こして来院された時のレントゲンです。

心臓の周り(肺になります)に白いモヤがかかっています。

これは「肺水腫」といって、心臓で調節できなくなってしまった血液中の水分が肺の中に漏れ出してしまっている状態です。こうなってしまうと、お部屋の中にいながら溺れてしまっているような状態と同じになってしまいます。

心臓には4つの部屋があり、流れてくる血液を決まった一方向にのみ送り出します。しかし心臓が悪くなってくると、多くの場合、心臓の部屋を区切る逆流防止弁が問題を起こしてしまい、血液の一部が逆戻りしてしまいます。心臓は非常に頑張り屋な臓器の為、限界までは自分で何とかしようと頑張ります。しかしどこかで限界を迎えてしまうと、今回のような症状を起こしてしまいます。

このワンちゃんは今回のように悪化するまでは、一切の咳や運動を嫌がるといった症状はありませんでした。呼吸が早く荒くなったな、と飼い主様が思ってからあれよあれよと症状が進んでしまったのです。

飼い主様が早めに気づき来院して治療を実施したため、呼吸困難の症状と肺に溜まった水は数日内で改善しました。

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治療開始後1週間後のレントゲンです。肺の周囲にあったモヤが無くなっています。

今現在は心臓のお薬を服用しながら、投薬内容を調節をしているところです。

投薬以外にも運動管理や、食事の内容などもみていく必要が今後はあります。

心臓の雑音を聴診で指摘された事のある子や、中高齢で運動したり興奮したりした際に咳が出る子、動悸息切れのようなものが目につくようになった子などは、レントゲンなどの検査を行って状態を調べておくことが大切です。



町田リス園のレプトスピラ感染疑いについて


1/31に当院近くにあります町田リス園で、園内のリスに行われている定期検査でレプトスピラ症の陽性反応が検出され、現在、町田市保健所が確認検査を実施しております。

現時点で確定結果は出ておりませんが、検査結果次第では皆様に本疾患についてご注意していただく必要がございます。

レプトスピラ症は人畜共通感染症です。

kansen_02.jpg(レプトスピラ菌の電子顕微鏡像。国立感染症研究所よりhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/531-leptospirosis.html)

病原性レプトスピラ菌を保有する主にネズミ類の腎臓に保菌され、その動物の尿を介して感染が媒介されます。尿を介して感染したレプトスピラは多くの動物(イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ウマなど)に保菌され、そのほとんどは症状を示さない不顕性感染となります。しかし症状を示していない場合でも細菌は尿を介して排出される為、知らずの内に感染を拡大させている恐れもあります。

今回のリス園のレプトスピラ疑いが確定した場合に、どういった経路で感染したかによって事態は大きく変わってきます。

尿を介した感染が最も多いですが、その感染経路は病原菌が含まれる尿または尿で汚染されたものを経口あるいは創口などからの経皮感染となります。(動物も人間も同じです)

レプトスピラ症は、急な発熱、元気消失・食欲不振という一般的な症状のみ回復してくる軽度なものから、黄疸や出血傾向、腎・肝障害を伴う重度なものまで症状に幅があります。

pp-c3ed2.jpeg(上:結膜の黄疸と出血。 下:口の粘膜の黄疸と舌の内出血病変)

3~14 日間の潜伏期を経て、発熱、食欲不振と元気消失、嘔吐、下痢、結膜充血などが生じ、症状が進行すると口の粘膜の点状出血や黄疸、全身的な出血傾向が見られるようになり、更には腎不全・肝不全へと進行して、最悪の場合死に至ります。

症状が特徴的でない為、ワクチンの接種履歴、野生動物(主にげっ歯類)との接触歴、河川などでの遊びの有無などの問診が重要となります。

いずれにせよレプトスピラ症を疑う症状がある場合は、すぐに当院へご相談下さい。

また、犬の混合ワクチンにおいてレプトスピラ症予防は混合8種以上のものについては含まれていますが、それより少ない混合ワクチン(5種、6種)には含まれていません。

レプトスピラ症の血清型によっては、追加予防接種を推奨する場合がございます。

レプトスピラ症のワクチンについても、当院へご相談下さい。



帝王切開を実施した小型犬ちゃんの例


ワンちゃんを飼われているご家庭のほとんどは、ペットショップさんなどで子犬と出会ってお家に迎えたり、あるいは保護犬を引き取って家族に迎え入れたりが多いでしょう。

ご自宅で飼われているワンちゃんの子供が欲しいので産ませたいかなと思っているのですが、というお話を時々飼い主様からご相談されます。

当院は直接的には繁殖の斡旋などは行っておりませんが、交配時期や妊娠診断は実施しております。

子供を産ませるのは、それを止めた方が良い理由(遺伝的疾患を有している・経済的に不透明・母犬に疾患がある・高齢等)がない場合は当院からあえて繁殖を止めて頂くことは申しません。

しかし必ずお話させて頂くのが、生んだ子・生まれた子全てに責任を持って飼育(又は里親さん探し)してあげてください、ということです。

犬も猫も基本は多産ですので、1頭だけというケースの方が少ないです。

1~2頭の場合もあれば、4~5頭という場合もあります。何頭生まれるかは神様のみぞ知るというところです。1頭だけ欲しかったのに、というような人間側の都合での繁殖は絶対に行ってはいけません。

また、ただ交配させて後は生まれてくるのを待つだけ、というものでも当然ありません。交配時期の見定め、妊娠中の生活・食事管理、妊娠中の母犬のケアや出産が近づけばそれに伴う準備や知識も必要になります。勿論、交配前にはワクチンなどの予防接種や明らかな遺伝性の疾患がないかなどを調べるのも、次世代の子に大切な事です。

赤ちゃんを授かるのは、人も動物も大変な事です。それゆえに素晴らしいというのもあります。

今回は小型犬の子で、事前にご相談をさせて頂いておりましたが、出産予定日に差し掛かっても兆候がなかなか見られず、いざ分娩兆候が来ても分娩には至らず途中で陣痛も弱くなってしまったということで緊急に来院していただきました。

事前に妊娠検査では2頭の子犬がおり、自然分娩可能な大きさでしたのでご自宅での出産の予定でしたが、来院時に改めてレントゲンを撮らせて頂くと

胎児2.png胎児1.png

子犬が全く産道の方に降りてきている様子がありません。

超音波検査で子犬の心拍を調べると、1頭の心拍数が低下している所見があったため、すぐに帝王切開を実施することになりました。

母犬の子は元気な状態だったのは幸いな点でした。

飼い主様のご協力もいただき、帝王切開にて取り出した2頭の子犬ちゃんは無事に生まれ、術後のお母さんのおっぱいを一生懸命に飲もうとしておりました。心拍の下がっていた子も当初はぐったりとしていて心配でしたが、その後徐々に活力が出て来て安心しました。

今回は飼い主様と事前にご相談しながらさせていただき、飼い主様もワンちゃんの出産に対するご経験のある方でしたので当日は子犬ちゃんの世話をお手伝いして頂きました。診察時間内であった事と当院の人員確保が可能であった為(それでも飼い主様にお手伝いをお願いさせてもらいましたが)に緊急的な帝王切開に対応できましたが、時間帯や人員の都合ではご対応できない場合もございます。あらかじめ連絡にて、「こういう状況である」というのを逐次連絡して頂きましたので、当院としても事前に準備を進めておくことができました。

今回のワンちゃんは自然分娩の方法を選択しましたが、犬種や胎子の大きさなどから、当初から帝王切開を選択する場合もあります。

どの方法が最適解かの判断は難しい点もありますが、いずれにせよご相談下さい。

今回生まれた子達が、元気に成長してくれることを願うばかりです。

(子犬ちゃんたちのお写真はバタバタしてて院長撮り忘れの大失態💦)



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