動物の輸血に関して ~輸血用血液はどうするのか~


輸血を必要する時にはどんなものがあるかご存じでしょうか?

大量出血で血液が減少してしまっている時(事故、腫瘍など)

血液を自分自身で作り出せない病気の時(骨髄の病気、白血病など)

赤血球などが壊されてしまう病気の時(溶血性貧血、犬猫ではタマネギ中毒など)

出血を止める成分が不足している時(血友病、DICなど)

これ以外にも沢山、輸血を必要とする時がありますが、例として挙げてもどれも重篤な事態の時がほとんどです。

輸血は根本的な治療法にはなり得ませんが、症状の改善や緩和、治療に反応するまでの対症療法としては非常に有益です。

輸血を行ったからこそ助かるという局面も数多く存在します。

では、輸血はどのように行うのでしょうか。

輸血そのものは点滴機を用いて、静脈から投与します。使う道具は輸血用で特殊なものですが、方法としては一般的な静脈点滴と変わりはありません。重要なのは、通常の点滴であれば様々な輸液剤がありますので状況によりそれらを選択すれば良いのですが、輸血の場合はどうでしょうか?

人間においては「血液バンク」というものが存在します。

赤十字の方が、駅前やイベント会場などで献血の協力を募っている姿はよく目にされた事もあるでしょうし、実際に献血をされた方も沢山いらっしゃると思います。そうして皆様から頂いた血液を血液バンクで一括保管し、血液を必要とする病院へ届けるというシステムです。

このシステムが存在する為、人間の病院では手術や病気の際に輸血が必要になった場合にはバンクへ連絡し、治療に使用する事ができます。

輸血に使う血液、『血液製剤』には幾つか種類があります。

血液製剤.png

(日本赤十字社九州ブロック赤十字血液センター連盟HPより http://www.bc9.org/about/type)

主にこの4つが使われています。かつては全血輸血が主でしたが、現在では病気によって必要な物をだけを輸血する成分輸血が人の医療では主流となっています。病気によって使われる製剤は異なります。

しかし、こういった血液製剤には"使用期限"が存在します。製剤により期限は異なりますが、例えば全血については採血後21日間しか保存できません。冷蔵保存あるいは冷凍保存すればいつまでも保管できるというものでは残念ながらないのです。

ですので、頻繁に献血の協力をお願いしているのにはこういった"使用期限"が存在するため、常に新鮮な血液と入れ替えておく必要があるからなのです。

では動物においてのお話ではどうでしょうか。

まず人間と同じような「血液バンク」というものが存在しません。血液を一括保管・管理、輸送する機構は残念ながら国内にはありません。

では動物が輸血を必要とする場合にはどうするかというと、ほとんどの個人動物病院または大学病院を含む二次診療病院では以下のような方法を行っています。

①病院にて供血(ドナー)となる犬や猫を飼育し、その子達から血液をもらう

②病院の患者様や、輸血を必要とする動物の飼い主様のお知り合いの方など、ボランティアで協力して頂ける子から血液をもらう

③同居動物がいるご家庭では、その同居の子から血液をもらう

④血液の代替となるような薬剤を用いる

当院においては現状で供血犬・供血猫は居ないため、輸血を必要とした患者様がいた場合には①以外の方法を取るしかありません。それが叶わない場合は、輸血用血液を手配できる別病院様にお願いさせて頂く事になります。

④に関しては、輸血の代替となって同等の効果を発揮してくれる薬剤があればそれにこしたことはないのですが、輸血が必要な状況に至ってはやはり輸血そのものに勝るまたは匹敵する物ではありません。

では①~③において、単純に血液が必要だから「血液を下さい」「はい、いいですよ」というものではありません。

ドナーとなる子からはその体格・体重に応じて安全と言われる量の採血をさせて頂きますが、血液をもらう以上は当然ながらドナーの子の血液が減少します。言い換えれば一時的に"貧血"が発生します。

また採血には時間を要しますので(10~15分位)、その間は動かないよう大人しくしていてもらう必要性があります。採血自体も動物にとっては不快でしょうし、更にそのままじっとしてもらわなければならないのでストレスは相応に感じてしまうことでしょう。

こういった事が必然的にある為、なかなかドナー協力が少なくなってしまっているのが現状です。

しかしこれはドナーとなる飼い主様からすれば、協力はしてあげたいけども負担がかかってしまうのは・・・とご心配になられるのは、家族の一員として過ごされていらっしゃるのですから当然かと思われます。

ですがそこを踏まえた上でも、皆様にお願いをさせて頂きたいのです。

輸血のドナー登録を、お願いさせて頂きたいのです。

(次記事へ続きます)



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