ちょっとしたお話 ~注射前のアル綿消毒~


注射をする前にその部分をアルコール綿(以下アル綿)で拭いて消毒してからチクッ。

ほぼ全ての人が経験している事ではないかと思います。

自分がお医者さんにかかり、ワクチンや点滴など注射をしてもらう時はこのアル綿で拭き拭きというのを看護師さんにしてもらっています。

このアル綿での注射部位の消毒・・・実は効果がほとんどないというのをご存知でしょうか?

動物病院においては、という一文を一応加えさせて頂きますね。でも人の医療現場においても同様の事は言われています。

動物も人も、皮膚・毛にはたくさんの常在菌とよばれる細菌が沢山います。

注射をする時には当然針を使いますので、針穴ができます。

この針穴から細菌が入り込んで感染・化膿を防ぐためにアル綿消毒している、というのがその理由と考えられていました。

ですが、これには医学的根拠が乏しかったのです。

アルコール消毒の原理は、適切なアルコール濃度を用いるとタンパク質を変性させる作用により細菌の活動力を奪ったり、細菌の防護壁となる細胞壁を破壊して倒す、水分を奪うことで変性作用を強化する、などがあります。

薄すぎるアルコールは消毒効果がありませんし、濃すぎるものは消毒効果は上がりますが生体に使う場合は正常な細胞にもダメージを与えてしまいますので、大体70~80%の濃度が適切と言われております。

(※関係ありそうでなさそうな話ですが、昔見た映画などでお酒を口に含んで傷口にブシャァ!!としてから、銃弾を取り出したりするシーンを見たことがありますが、「口に含んだ時点で消毒の意味はないのでは...」と思いつつ、「そのお酒では消毒できないのでは...沁みるだけでは...」などと、演出に無言でツッコミを入れてたりしました)

そしてアル綿消毒に戻りますが、アルコール度数が上記以上のものに浸漬させたものが当院もありますが、数回拭いた程度では注射部位の細菌をやっつけることはできません。

全然やっつけられないという事ではないですが、針穴から入る恐れのある細菌を全てやっつけておこうという趣旨には及ばないレベルです。

では何のためにやっているのでしょうか?

『何とな~く』

表現が雑すぎて怒られてしまいますね(;^_^

注射を打つ時にはアル綿消毒をする、というのは多くの方がそういうものなのだと認識されていると思います。ですが、実際にはその効果は懐疑的又は否定的とされています。

では意味がないのならその行為を省略してしまっても問題はありません。

ですが、お医者さんでアル綿消毒される前にいきなり注射を打たれたら「え?!」と思ってしまいますよね。「あの先生、消毒しないで注射してる・・・うわぁ・・・」と思ってしまったりすることもあるのではないでしょうか。

ですから、今現在もお医者さん(人も獣医も)はアル綿消毒というものを行っているのです。消毒目的というより、注射を打ちますよーという儀式的な意味合いの方が強いかもしれません。

ただ、有効な場合も当然ながらあります。

それは注射部位がひどく汚れていて汚染されたりしている際は、綺麗にした上で注射をうった方がよろしいでしょう。泥・土が多いと、やはりそのまま打つのには懸念がありますので、消毒兼清拭してから注射させて頂いております。

また、採血の際には血管を浮き上がらせてわかりやすくする為にアル綿で拭いたり、動物病院ですとスプレーしたりしています。

アル綿消毒をするから良し悪し

アル綿消毒をしないから良し悪し

どちらがどっちということではなく、必要に応じて使い分けている方が大半ではないかなと思いますが、当院はワクチン接種などの時にアル綿消毒を基本は行わないで注射を打つことが多いですので、驚かないで頂ければなと思います。



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