子宮蓄膿症のワンちゃんの一例
避妊手術を行っていない犬猫で遭遇する機会の多い病気は、子宮蓄膿症や乳腺腫瘍が筆頭に挙げられます。
乳腺腫瘍は早期の避妊手術によって発生率が将来的な発生率が低下するという事は幾度かお話させて頂いております。
今回例に挙げている子宮蓄膿症におきましては、避妊手術を行えば発症する事はまずありません。
この病気は中高齢になってから発生しやすくなります。発情を迎えるとホルモンバランスが変化することで、体の免疫力が低下してしまいます。その免疫力の低下している時期(大体発情出血から2か月間程)に子宮に細菌感染を起こしてしまうと、子宮蓄膿症へなってしまいます。
発情の有無に関わらず、基礎疾患や高齢での体力免疫力の低下、卵巣の腫瘍やホルモン異常などが原因となっていることもあります。
今回のワンちゃんは間もなく14歳になる子で、食欲不振とお尻からの出血を主訴にご来院されました。
診察するとお尻からの出血ではなく、陰部から膿が排出されていました。
この後各種検査を行い、開放性子宮蓄膿症と診断しました。
子宮蓄膿症には二つのタイプがあり、開放性か閉鎖性か、つまりは膿が外に出てきているかそうでないかに分かれます。通常は閉鎖性の方が発見までに時間がかかることがあり、また症状が重篤になる傾向にあります。
このワンちゃんは開放性で、血液検査上では重症度はまだ高くない状態と判断し、手術適応としました。
子宮蓄膿症の治療法には外科的治療と内科的治療がありますが、根治的な治療となる外科的治療を選択しました。
↑術中の子宮です。通常の子宮は薄っぺらい紐のような形態ですが、膨らんで筒状になっています。
摘出した子宮です。左右の卵巣も大きくなっていることから、卵巣の問題からホルモン異常を起こして子宮蓄膿症になってしまった可能性が考えらます。
子宮を一部切開すると、黄色の膿汁が沢山でてきました。
このワンちゃんは術後の翌日には食事を食べ始めてくれ、手術から4日目で退院しました。まだ術後のケアが必要ですが、しっかりと食事を食べて頑張って治ってほしいですね。