2017年12月

避妊手術頑張りました! ~夏目さん編~


子猫の時...といってもこの日の時点でもまだまだ年齢的には子猫さんなのですが、みゃ~みゃ~の時から当院へ来ていただいているmix猫の夏目さん。『おてんば娘』という表現がピッタリという様子の元気な女の子で、来院時は診察室を好奇心旺盛に色々と中を見て回っていました。

飼い主様が遠方にお引越しされたので夏目ちゃんとはなかなか会えなくなってしまうなと思っていたところ、避妊手術のご予約でご連絡を頂きました。わざわざ遠くから当院にいらしていただき、嬉しい限りです。

3か月ぶりに会った夏目ちゃんはその短期間でもググッと成長して、小さい体格のイメージが強く残っていた私としては「夏目ちゃん...か?!」と一瞬思ってしまいましたが、顔つきはまだ幼さの残る感じで本人に間違いなしでした。当たり前ですが(笑)

飼い主様と離れて少し不安そうな様子ではありましたが、そこは持ち前の性格でわりと早くに落ち着て部屋で過ごしていました。

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画像がぶれてますが、こんな感じです。『撫でてよろしくてよ』という写真ですが、この姿勢のままずりずりっと少しずつ前進してくるので、これ以上前に出てきて落ちないように地味に抑えてもいる場面です。やはりケージ内はご不満のようで、隙あらば突破口を探っておりました(^-^;

この後に避妊手術を実施させていただいて、一晩入院となります。

翌朝の夏目さん。

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『私を一晩ケージに閉じ込めた奴が来たわ』

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『ちょっと、私を外に出しなさいよーーーー(院長の白衣の裾にちょいちょいしてます)』

お迎えにいらした時も堂々とした様子でしたが、でもちょーっとイタズラする様子が見られたのでこの写真の後にアクセサリー装着を院長より言い渡されてしまいました💦

元気溢れる夏目さん、自宅でちゃんと安静ができてるかしら?一本だけ糸を自分でイタズラしちゃった、というご連絡は頂きましたが(笑)



尿道閉塞による急性腎不全の猫ちゃんの一例


人のお医者さんでは寒い時期にはインフルエンザや風邪もそうですが、泌尿器関係のトラブルが多くなります。当院でも11月下旬から気温がグッと下がってからというもの、尿路トラブルで来院される患者様は増えてきております。

その理由の一つとして、飲水量の減少があります。常に暖かい飲み物が側にあれば冬場でもちょくちょく飲むことで水分量を確保する事ができますが、通常は冷蔵庫にある飲み物をレンジで温めたりお湯を沸かして作ったりとひと手間が増えます。おまけにその準備中も状況によっては寒い...直前にコタツに入っていようものなら尚更出たくなくなってしまいますね。その結果、飲水量が減るのでオシッコを作り出す量も減ってしまう事になります。

二つ目は先程の理由と一部重なりますが、寒いのでおトイレに行く機会が減り、我慢してしまう傾向にあります。暖かいリビングから、冷え冷えの廊下を経てトイレへ...気持ちはわかります、寒いですものね。

3つ目はやはり寒い事で運動量が減ってしまい、血行や代謝などが鈍くなってしまう事です。

これらが重なり、特に1つ目の理由が大きいですが、膀胱炎が冬は多くなります。

そしてそれは人だけでなく動物も同じです。

動物の飲むお水は容器に入れてあり、入れ替える事はあってもなかなかお湯(ぬるま湯)などの飲みやすい温度で入れてることは少ないと思いますし、入れても当然時間が経てば冷めてしまいます。動物が飲む度に温めているというケースはほとんどないと思いますので、冷たくなった水を飲むことが多いでしょう。当然動物もこの季節にキンキンに冷えた水を好んで沢山は飲みたくないですし、寒いので暖かい場所にいる時間が多くなります。結果、水分量が減ってしまいます。

水分量が減ってオシッコ量減少、排尿頻度が減少するとどうなるか。人間と一緒で膀胱炎や尿路結石症を引き起こす事になってしまいます。過去にオシッコ関連でトラブルの履歴があったり指摘を受けたりした子は、この時期はオシッコの出方や量などをよく観察するようにしてあげてください。また水分摂取量を増やすために、先述のぬるま湯作戦やフードふやかし作戦などを実施してみるのも予防になります。

今回の猫ちゃんは飲水量の増減といった背景がどこまで関与していたかは難しい点もありますが、やはり尿路トラブルで来院されたケースです。

近頃吐く回数が多いので知人に相談したら毛玉が出来て吐いているのだろうから取ってあげるお薬とかサプリメントを病院でもらったらどうか、と言われたとの事で飼い主様だけ来院されました。お話を伺うと、単に毛玉による胃腸機能低下による嘔吐にしては頻度が多すぎる為、毛玉だったとしても閉塞などを起こしている恐れがあるので直接来院する事を強くお勧め致しました。

お話をさせて頂くと、飼い主様はお仕事がありお忙しいところでしたがやはり心配という事ですぐに猫ちゃんを連れて再度来院してくれました。

状況を見るや、あまりに元気がない様子でぐったりという印象でした。

お話を伺うと、ここ二日ほどオシッコの痕跡がなかったような...?との事。更に深く問診をさせて頂くと過去に尿石症の履歴があるらしい(途中から引き取った子とのことでそれ以前の情報はよくわからない)との事でした。触診すると硬く張った膀胱がありました。

直ぐに各種検査、特に血液検査を行うと腎臓の値が著しく悪化しており、またペニスの部分には血液の付着が認められたことから、尿道閉塞による急性腎不全と判断し、即時にお預かりして閉塞の解除処置をすることになりました。

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ピンク色の物体、これが尿道にコルク栓のようにつまっていてオシッコが出ない状況に陥ってしまったのです。このピンク色の物体を顕微鏡でみたものが下の写真です。

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水晶のような欠片が沢山あります。ストルバイト結晶といいます。この結晶と血液などの炎症成分が混ざり合って栓となってしまったのです。

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カテーテルを通して膀胱内に溜まっていたオシッコを出し、膀胱内を洗浄した上でカテーテルを尿道に残したまま、数日間点滴入院となりました。

幸いにもこの猫ちゃんは回復が目覚ましく、著しく悪化していた腎臓の数値は4日後には正常値に戻り、食欲も回復して排尿も自力で可能な事が確認されたので5日目に退院となりました。しかしまだ膀胱内には結晶成分が残っているであろうこと、膀胱炎は長期間の投薬が必要な為に再閉塞のリスクは残ったままとなります。引き続き注意しながら経過を見ていく必要性があります。

今回は飲水量の有無というより、体質及び食事の影響により結晶(結石)が形成されてしまい、それが原因となって泌尿器トラブルを起こしてしまった例となります。こういったケースでは治療完了後も尿石症の再発を防ぐために食事の管理が絶対に必要です。もしも怠ってしまうと、再び同じケースになってしまう例は数多くあります。

もしも仮に毛玉のせいだと思ったままでしたら、おそらく2日後には命を落としていたでしょう。最初のお話のみでは毛玉の影響或いはその閉塞という可能性が考慮されましたが、実際は胃腸トラブルではなく泌尿器系のトラブルだったのです。お話をさせてもらった後に様子を見ずにすぐに連れて来てもらった飼い主様の判断は適切でした。

実際に診察させてもらったからこそ原因が特定できたものです。このような事例もある為、当院では新規病変へのお薬のみの処方というのは行っておりません。お薬は診察をさせて頂いた上での処方となりますので、ご理解ください。

今回見られたストルバイト結晶は、リン酸アンモニウムマグネシウム結晶というのが正式名です。体質によって出来やすい/出来にくいというものが根本にあり、そこにプラスして食事成分でミネラル分が多かったり、食事内容の影響で尿がアルカリ性に傾いたりすると形成され易くなってしまいます。また膀胱炎からストルバイト結晶が形成されてしまう事もあります。

この猫ちゃんは結晶の大きさで顕微鏡で見える大きさの石でしたが、時間が経つと結石となってしまいます。ストルバイトは内科的治療により溶解が期待できる石の種類になります。大きさや種々の要因により完全な溶解が出来なかったり、無症状ながら再発を繰り返したりという例もありますが、溶解できない種類の結石(シュウ酸カルシウム結石)などは外科的対応を考慮する必要性が高くなってしまいます。

過去に尿石症で治療された経験のあるワンちゃんネコちゃんの飼い主様にご注意いただきたいのは、市販の「尿石症対応フード」は予防には使えるケースもありますが治療には使えません。また予防においても効力としては動物病院でオススメさせて頂いている療法食や維持食に比べると低いと言わざるをえません。対応フードを与えていても、注意深くオシッコの様子は観察するようにしてください。



年末年始の診療日のお知らせ


12月31日(日)~1月2日(火)まで休診となります。

1月3日(水)は午前診療のみとなり、午後は休診となります。

1月4日(木)以降は通常通りの診察となります。

年末年始は業者さんや流通の都合上、お薬やフードの入荷が遅れたり出来なかったりする場合がございます。お薬やフードは余裕をもってお家に置いておいていただきたいと思います。24日頃までにご注文を頂ければ年内の入荷が可能と思われますので、お早めにご確認下さい。



乳腺腫瘍と卵巣腫瘍を摘出した一例 


未避妊の中高齢の犬猫に見られる代表的な疾患として子宮蓄膿症や乳腺腫瘍が挙げられます。

これらの内、乳腺腫瘍に関しては2回目の発情を迎える前までに避妊手術を行うと将来的な発生リスクを下げられるというデータが出ております。初回発情前までに実施すると将来の発生リスクは0.5%、1回目を迎えて2回目前までに実施した場合は8%、それ以降に関しては26%となります。

乳腺腫瘍は未避妊の子に必ず発生するわけではありませんが、発生してしまった時は犬の場合は50%が良性・50%が悪性で、更に悪性の内の50%(乳腺腫瘍全体の25%)が転移などを起こす超悪性と言われています。猫においては90%が悪性と言われており、再発率・転移率も非常に高いものです。乳腺腫瘍に特効薬となる抗がん剤がまだない為、基本的には外科切除が第一選択となります。

犬は乳頭が左右5対、猫は4対が基本となります。外科切除の場合は「どこの乳腺に」「どのくらいの大きさの腫瘍があって」「転移はあるのか」によって、手術の方法が幾つかに分かれます。

手術方法は以下のものがあります。

①乳腺腫瘍だけを切除する方法

②腫瘍を含む乳腺だけを切除する方法

③腫瘍を含む乳腺と、リンパ管で繋がっている乳腺を含めて切除する方法

④片側の乳腺全体を切除する方法

⑤両側の乳腺全部を切除する方法

猫の場合は乳腺腫瘍は90%が悪性の為、手術は④の腫瘍が発生した側全ての切除が第一選択となります。

犬の場合、1~3の乳腺と4~5の乳腺がそれぞれがリンパ管で繋がっており、3と4の間には不定形ながらリンパ管で繋がっている事があります。どの乳腺にどのくらいの大きさの腫瘍が発生したかによって①~⑤の方法が選択されますが、①と⑤は実施は推奨せず、③と④が主体となります。

乳腺腫瘍の手術は広範囲に及ぶため、術後に皮膚の張力がかかってしまう事と切除部位が大きい為に痛みも強いものとなってしまいます。更には転移してしまっている場合には手術自体が実施できないというケースもありえます。悪性の場合は腫瘍そのものが自壊してしまって管理が大変だったり、肺転移する事が多い為呼吸困難を呈する事があります。

この病気のリスクは先述の通りに、なるべく若齢のうちに避妊手術を実施する事で大きく下げることが期待できますので、その実施を当院を強く推奨しております。

今回は、今までほとんど病気らしい病気をしたことがなかったという13歳の女の子のワンちゃんです。穴掘りが大好きで泥んこまみれになって遊ぶのが日常の元気な子です。おっぱいの一つにしこりがあるとの事で来院されました。

体調は何も問題はなく、食欲もしっかりとしていて、しこり以外に気になる事は特にないとの事でした。実際にしこりを調べてみると、一つだけでなく複数の乳腺に幾つものしこりが見つかりました。多発的な乳腺腫瘍でした。両側に多数広範に存在する事から、片側切除を期間を空けて左右それぞれ実施するという方針となりました。

手術を実施する前の検査で大きな問題が一つ。実は、フィラリアが陽性だったのです💦

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フィラリアの検査試薬で陽性判定=フィラリアの成虫がいるという事になります。また、血液を顕微鏡でのぞくとミクロフィラリアも陽性でした。フィラリアの予防を怠ってしまっていたということでした。幸いにも咳などの呼吸困難や腹水などの症状は皆無でしたが、麻酔を行うにあたっては非常にリスクが高くなってしまいます。

血液検査、レントゲン検査、超音波検査などの術前検査を全て行い、麻酔の実施が可能と最終的に判断を下し、片側乳腺切除と子宮卵巣摘出術を実施しました。

乳腺腫瘍切除の際の子宮卵巣切除術の併用についてのメリットについては議論があるところですが、事前の腹部超音波検査にて卵巣にも異常を認めた為に今回同時に行う事になりました。

術後の創部の様子です。

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広範に及んでいるため縫合数も多く、痛々しく感じてしまいます。

下は切除した乳腺組織になります。この切除した乳腺の複数に、幾つかの腫瘍があります。

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下が切除した卵巣と子宮です。これらの臓器にも異常な様子が明らかでした。子宮は腫大しており、左右の卵巣には腫瘍が形成されていました。

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腫瘍化している卵巣です。

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術後は4~7日間の入院が必要となります。傷口に滲出液という炎症による水分が溜まってしまうと治癒がうまくいかない為にその管理も必要となりますが、今回のワンちゃんでは幸いにもそういったものはほとんど見られずに、経過は順調でした。

今回は飼い主様とのご相談にて1週間の入院とさせて頂き、入院中も3日目からはトイレお散歩中にもっと散歩に行きたいとアピールする様子でした。

病理検査では、今回切除した乳腺腫瘍は全て良性との結果でした。卵巣の腫瘍は良性ではありましたが一部悪性の兆候も見られた為、今後も引き続き経過を見ていく必要性があります。

今回の創部が安定してしばらく後には、反対側の切除が予定されています。

次なる手術にてこの乳腺腫瘍と完全に手を切れるように、ワンちゃんには頑張ってもらいたいと願っております。

またフィラリアに対する治療も継続していく必要性があります。おそらく予防を毎年して頂くよりも、治療の方が手間も費用も要する事になってしまいますが、今のところ無症状で推移してくれていますので、時間をかけて駆除していく方法を行っていきます。

フィラリアも乳腺腫瘍も、どちらも予防を心掛けて頂くことが大切になりますので、しっかりと行っていきましょう!



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鶴川街道、「市立博物館入口」信号近く

うぇる動物病院

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駐車場内でのトラブルは責任を負いかねますのでご了承の上ご利用ください。

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