動物には換毛期があります。大雑把に表現すれば、夏前と冬前に顕著に換毛が見られます。
我々もタンスの衣類の衣替えを行うのと同様に、動物達も毛皮を刷新してその季節にあうように調節をします。
年がら年中換毛期!!と思うほどに沢山毛が抜ける子も勿論いますが、多くの子は上記の季節に抜ける量が増えるでしょう。
特に猫ちゃんは毛づくろいを自分ですることから、毛を飲み込んで毛玉となる事が多くあります。よく毛玉をゲェッと吐いていたり、便に多くの毛が混じって固くなったり、毛で繋がってなかなか切れが悪い便があってお尻にくっつけたままだったりと、いずれかの光景を目撃されている猫ちゃんの飼い主様は多いと思います。
印象としましては例年GW頃から6月いっぱい頃まで、換毛に伴う毛玉などでの胃腸器症状、食欲不振などで来院される猫ちゃんが多いと感じます。
今回のケースの子は、そんな毛玉に悩まされてしまった症状の中でも「運が悪い」と表現されてしまうような例でした。
2歳の短毛~普通毛の猫ちゃんですが、食欲不振を主として来院されました。その他にも頻回ではないですが、まとまった量を吐き戻すことが時折見られる症状も同時期に見られているとのことです。普段より毛繕いをよくする子でしたので、時期もあって毛玉による胃腸のトラブルかという事で治療を開始しますが、単純な毛玉による胃腸バランスの悪化ではなく、毛玉がガッチガチの石のようになってしまい、腸の一部を閉塞してしまっていました。
赤く囲った部分に異物が存在していました。幸いにも腸の壊死などは認められなかった為、大掛かりな手術にならずに済みました。
摘出された異物です。大きさは2.5cm程です。そしてこれが何だったかというと、毛と便が混じり合ったものでした。ただ、その固さは石のようでした。このような便はほとんどは通常の便として排出されますが、今回のケースでは『運悪く』引っかかってしまった、ということです。
普段から毛繕いをよくして、便に毛が多く混じる子や毛玉を吐く回数が多い子は、毛玉を排出させやすくするような食事であったりサプリメントを日常的に使用していただき、毛玉による閉塞のリスクを低減させることが大切です。猫草を食べさせて吐かせるという方法もありますが、個人的には推奨いたしません。
換毛期でよく毛繕いするor毛がよく抜ける子で、食欲がいまいちだったり便通がなかったり、便が固かったりする場合は、一度ご相談下さい。