2018年10月

皮膚に発生する"できもの"いろいろ


皮膚の病気は飼い主様が目に見えて気づきやすい点で、発見が早い傾向にあります。

・皮膚が赤い、といった色調の変化

・脱毛してきて毛が薄くなってきた

・フケが多くなった

・しこりができている 

などなどです。普段目にしやすい背中側や頭部の病変は発見されやすいですが、お腹側の脇や股の辺りといった陰になり易い場所だったり毛量が多い子は見つけにくい事もあります。普段からブラッシングや定期的に(毎日でなくても十分です)体を触ったりしてコミュニケーションを取りつつ、皮膚のトラブルを早期に発見するという事は非常に大切です。

今回は皮膚のトラブルの中で、"できもの"(しこり)について幾つかご紹介したいと思います。

よく「イボができてしまった」とご来院されるケースがあります。イボといってもその形や大きさは様々です。

特別に治療介入しなくとも悪さをしなければ様子を見てもよいものもあれば、悪さをしている・今後しそうなものは治療しなくてはならないものなど、ケースバイケースです。

外見のみでの判断では誤ってしまう事がある為、一言に"イボorできもの"といっても、やはり検査を行って調べておくことが望ましいです。

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上の7つの写真ですが何れも皮膚のしこりやできものを主訴にご来院された例で、全て切除摘出した後に病理検査を実施して確定診断が出たものになります。

発生場所や形、動物の種類・年齢といった情報は勿論重要ですが...

さて、今回は外観のみで結果的にどれが腫瘍で、そして良性悪性だったか、わかりますか?

ちょっと予想してみて頂ければと思います。








では解答に参りましょう。

腫瘍性で且つ残念ながら悪性という結果だったものは、③と④です。

腫瘍性且つ良性という結果は、①②⑤⑥です。

非腫瘍性だったものは⑦でした。

どうですか?予想されたものと合っていましたか?

良くない・悪そうな"できもの"のイメージは、見た目の色が赤かったり赤黒くなっていたり、形が不整だったりというものがあるかと思います。確かに短期間の間に大きくなってきて色調が変わっているものは悪い例である事が多いのも確かですが、一概にそれだけで悪性と判断する事はできません。

"できもの"を見つけた際には、様子をずっと見続けるのではなく早めに一度診察をして、それが何であるかを調べておく事が大切です。

検査には針生検、切除生検といったできものの細胞組織を採取して顕微鏡で視ることで相手の正体を調べる事が一般的です。

針生検は簡便で負担も少ない事からよく実施される検査です。但し採取される組織量は少ない為、確定診断には至りません。

切除生検は病変の一部あるいは全てを採取して検査するもので、小さければ局所麻酔、大きいものは全身麻酔にて採取します。小さすぎて針生検が実施できない例や、小さめで切除する事で検査と共に治癒が期待できそうな場合にはこちらを選択する事があります。

いずれにせよ、外見では腫瘍なのかそうでないのか、良性なのか悪性なのかは目安でしか判断できない為、気になる"できもの"を見つけた場合には、検査を含めて受診されることをおすすめいたします。




腸閉塞で腸管切除した一例


先日の台風は夜間に通過したので、その凄まじさはニュース映像と暴風の音で主に感じられるものでしたが、通過した翌朝は街のいたるところにその爪痕が残されていましたね。自宅近辺では植え込みの木が倒れているところもあれば、どこから飛ばされてきたわからないような看板や、傾いてしまっている大きな立て看板、屋根が半壊してしまっている場所もありました。

今回の台風による動物達への影響は、やはりその音にかかわるものだと思われます。

普段聞かないような風の音、物が飛ばされたりぶつかったりする音などで一時的に情緒不安定になってしまったりする子もいるかもしれません。そういった場合には、何より飼い主様と一緒にいる時間、安心できる時間を作ってあげて頂く事と、不安などのストレスを発散できるように散歩や遊びなどを行ってあげることで、気持ちの回復が早まってくれることでしょう。

今日は腸閉塞の事例です。

異物による閉塞は決して少なくありません。果物の種、ボール、靴下、手袋、毛玉、ティッシュ、布端切れ、糸や紐、オモチャなどなどがよく見かけられる異物です。異物の多くは腸の細い部分、小腸で詰まってしまう事が多いです。大腸は太いために、小腸を通過してきた異物がここで詰まることはあまり見かけません。あまりに大きいものは胃を通過する事ができず、胃の中(幽門)で詰まってしまうでしょう。

食べてはいけないものを飲み込んでしまった場合は、すぐに処置が必要になります。

内容や大きさによっては吐かせて回収させる催吐処置や、吐かせることが危険だったりするものは麻酔下内視鏡での摘出、液体や薬剤などの場合には胃内洗浄などを行います。

何を、いつ、どれくらい飲み込んでしまったかというのは情報として非常に重要なものになりますので、是非記憶に留めておいていただきたいと思います。

今回の子はパズルマットの一部を齧っていて、それを吐いていたという主訴がありました。

その症状が見られてから徐々に食欲・元気がなくなってきて、嘔吐も頻繁にみられグッタリしてしまったとの事で来院されました。

高齢の子で全身的な体力の低下、脱水が顕著だった為に危険性が高い状態でした。問診で得られた情報と画像検査にて腸閉塞を確認し、来院日は点滴処置による状態改善を図り、翌日に手術を行いました。

閉塞していた部分は詰まりやすい小腸の空腸・回腸といった細い部分より手前の、十二指腸の部分で閉塞していました。

閉塞部分の周囲は炎症により癒着があり、また閉塞部の一部は壊死が認められました。

場所が良くないことにこの近くには膵臓という臓器が存在するため、そちらの影響も懸念されました。

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切除した閉塞部分です。一部壊死と癒着があった為、その領域を含んで健康な部分の一部を含めて切除してあります。

妙に鋭角的になっている腸がおわかりいただけるでしょうか。

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一部壊死して、癒着していた部分です。

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これがこの子を苦しめていた敵の正体です。飼い主様の仰られていたように、パズルマットの一部でした。

パズルマットの角の部分がつっかえ棒の役割となってしまい閉塞してしまったのでしょう。

来院時の状態と、閉塞部分が懸念される領域でしたが、1週間の入院の後には驚くほど食欲旺盛になって退院していきました。きっとこの食欲なら回復も早い事でしょう。

異物による閉塞は、疑われるものと、診断・治療までの時間が大切です。一般的には0~1歳までの子犬子猫や、食事やオヤツを丸飲みする傾向にある大型犬の子などが異物誤飲が多くみられます。また猫は糸や紐といったものでの閉塞も多く、これらは非常に腸の損傷が広範囲に及ぶことが多いですので、紐などで遊ぶ際は十分に気を付けてあげてくださいね。



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